エレクトリック・ステイト:映画短評
エレクトリック・ステイト
ライター3人の平均評価: 3.7
へなちょこなロボットがみな愛おしい
『アベンジャーズ』のルッソ兄弟監督が、シモン・ストーレンハーグの同名原作から"ロボットと旅をする少女"と"廃棄されたままのマヌケな顔の錆びたロボット"という要素をピックアップして、新たな物語を創り上げたのが本作。大挙登場するトボケた造形の錆びて汚れたロボットたちが、どれも愛おしく、ルッソ兄弟がこんなにへなちょこなロボットが好きだったとは。ロボットの塗装された顔は表情が変わらないのに、そこにさまざまな感情が浮かぶのが見えてくる。
原作ファンは同じ原作者のイラスト集が下敷きのドラマシリーズ「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」も要チェック。
ルッソ兄弟の優しさを感じる
ハイテクとレトロが混在したSFアドベンチャー。『アベンジャーズ』を背負い込んで、よっぽど大変なはずのルッソ兄弟ですが、その合間合間にこういうチャーミングな一本を挟んでくれるのですから、見事なバイタリティーです。ミリー・ボビー・ブラウン、クリス・プラット、キー・ホイ・クァン、スタンリー・トゥッチと言ったキャストに加えてロボットたちの声優などにMCU繋がりの面々も多数参加しているのも嬉しいですね。冒頭のフェイクニュース映像で映画の世界観に巧く誘導されて、そのまま一気にラストまで駆け抜ける爽快感があります。ルッソ兄弟の優しさを感じるテイストも好印象です。
豪華(すぎる)キャストが揃った超大作映画
製作予算は3億2,000万ドル。そう知らなければ、そこそこ楽しめる作品ではある。たとえば、ユーモラスでありながらそれだけにどこか気持ち悪いロボットを含め、レトロと未来の雰囲気が混じった世界観は面白い。しかし、話とキャラクターがなんとも薄いのだ。キャストが豪華なだけに、余計そう感じる。クリス・プラットはかつらとヒゲを取ればいつもの彼のキャラだし、あまりに出番と見せどころがなくて無駄使いされている俳優が実に多い(それでも出たがったのだから、そこはルッソ兄弟の人望か)。核であるはずの姉弟愛も、最初にきっちりと彼らの関係が描かれておらず、感情移入させるには弱い。次への期待を匂わせるが、果たして。