僕のワンダフル・ライフ (2017):映画短評
僕のワンダフル・ライフ (2017)ライター4人の平均評価: 3.5
繰り返し犬が黄泉がえり、疲れ切った人の心を癒す最良の犬映画
都合よく犬を擬人化しすぎという批判は野暮の極み。人の心を解するが、人と会話はできない犬ベイリーの目線を通し、人間社会を見つめる物語は、もどかしくもいじらしい。生きる目的を自問しながら飼い主の幸福を第一に愛情を注ぎ、土地を変え犬種を変え、何度も犬として転生する。時代を追うごとに、ホームドラマ、警察ドラマ、ロマンスへとスタイルを変えつつ、60年代からのアメリカ半世紀の変化を俯瞰する構成も心憎い。繰り返し黄泉がえる目的とは何か。人と犬が共にそれを悟るとき、マイライフ・ウィズ・ドッグズな監督ラッセ・ハレストレムならではの情感は最高潮に達する。挫折を味わい疲れ切った心を癒すドッグ・ムービーの到達点だ。
ワンちゃんたちの名演技に犬好き&動物好きはメロメロです
最愛の飼い主との再会を願って輪廻転生を繰り返す犬の物語。ある時は人間の悲しみや孤独を癒し、ある時は人間に勇気や元気を与えてくれる忠犬の深い愛情が描かれる。
動物愛護協会の推薦も必至なコテコテの感動ストーリーは少々気恥ずかしくなるが、涙とユーモアのさじ加減も絶妙なハルストレム監督の演出には嫌みがないし、なにより犬好き&動物好きのハートをわし掴みにするワンちゃんたちの名演技にやられる。
物語の背景に投映される米国近代史の移り変わりも郷愁を誘うし、‘60年代のファッションアイコンにして元クインシー・ジョーンズ夫人ペギー・リプトンが、初老になったヒロインを演じているのも嬉しい驚きだ。
猫ブームに押され気味だけど、犬はやっぱりベストフレンド!
猛暑の車内から助け出してくれた少年イーサンと幸せな犬生を過ごした犬ベイリーが「イーサンを幸せにする」ために何度も生まれ変わる、とプレミスだけで泣ける物語。輪廻転生して別の犬種になったベイリーと新たな飼い主たちの関係性は時代によって異なるけれど、基本のドラマ部分はかなりお涙頂戴な展開。見る人によっては「ケッ」となる可能性大かも。でも、これは一種のファンタジーだし、登場する犬たちの可愛らしさに免じて許してほしい。可愛いけどツンデレの猫と違って、飼い主に惜しみない愛情を注いでくれる犬ってやっぱり人間のベストフレンドなんだな〜と実感。しかもベイリーは、恋も取り持ってくれる気の利く名犬なのだ。
"犬がこんなこと考えていたらいいなあ"を描くファンタジー
犬好きの"犬がこんなことを考えていたらいいなあ"という願望をそのまま描いたファンタジーの趣き。子犬が、飼い主の少年に純粋な愛情を注がれて、自分も無償の愛を注ぎ返し、それによって幸福になる。その原体験があるために、犬は何度も死んで生まれ変わるが、そのたびに飼い主に無償の愛を注いでいく。そんな犬の心の声を演じるのは「アナと雪の女王」のオラフの声役のジョシュ・ギャッド。彼の演技が素晴らしすぎ、観客がそのときの犬の気持ちを想像するより早く、セリフでそれを語ってしまうのがちょっと残念な気もするが、そういう言わずもがななものを、あえて我慢できずに言ってしまうようなところも犬っぽいのかも。