初恋 (2019):映画短評
初恋 (2019)ライター6人の平均評価: 4.2
100%三池崇史。血みどろカオスな純愛物語。
Vシネ時代のがむしゃらな勢いとエンタテイナーとしての成熟を兼ね備えた三池崇史の快作。死を宣告されたボクサー(窪田正孝)とヤク浸けにされた少女(かなり前田敦子似の新人・小西桜子)が、歌舞伎町ヤクザとチャイニーズ・マフィアと悪徳刑事の抗争に巻き込まれていくというカオスな展開。さらには恋人殺されて復讐鬼と化し、でっかいバールを武器にしたベッキーが乱入、真夜中の巨大ホームセンターで繰り広げられる四つ巴五つ巴の大爆笑修羅場に大満足。かといってタイトルも決して嘘ではないのだ。「さらば、バイオレンス」なんて監督は言ってるけど、もともとあなた、大ロマンティシストじゃないですか(笑)。
キャッチコピーにしびれる
三池崇史監督がラブストーリー!と宣言して作られた本作は、久しぶりといっていいほど三池テイストを堪能できる暴力的な愛の物語。
全ての出演者が嬉々として演じていることが伝わる楽しさに満ちている。
ヒロインに大抜擢された小西桜子の奮闘も忘れ難い。
映画を見終わった後に改めて“最期に出会った、最初の恋”というキャッチコピーを見ると、そこに込められた二重の意味にが分かって、思わず唸りました。
お帰りなさい!三池監督
映画監督たるもの新たなジャンルに挑みたいもの。『テラフォーマーズ』も『ラプラスの魔女』も進化には必要な過程だったでしょう。だがやはり三池崇史監督と言えば頭のネジが2、3本ぶっ飛んだ輩が大暴れする裏社会モノであり、常識破りのアクションであり。勝手ながら、これが見たかった!と深い安堵すら覚える。撮影困難といわれる歌舞伎町を、我が物顔で作品の舞台にできるのは三池監督ならではだろう。ただ過去作を知る者にとっては想定内の三池節。唯一、ベッキーは想像を超える怪演で、仲里依紗同様、三池作品で女優が覚醒する瞬間を目撃するに違いない。ちなみに海外版は日本版より8分短い。そっちの方が断然テンポが良い。
痛快にして爽快な東映Vシネ風純愛ストーリー
歌舞伎町の裏社会で勃発した熾烈な勢力争いを背景に、余命宣告を受けた若きプロボクサーと親の借金のかたに売られた少女の逃避行が描かれる。さながら東映Vシネ風純愛ストーリー。赤裸々なセックスとバイオレンスの応酬でハードボイルドなやくざ映画のムードを醸成しつつ、暴力団に中国マフィア、半グレに汚職警官らが入り乱れるあり得ないシチュエーションを、面白ければ何でもあり!的なノリで突っ走っていく。そういう意味では痛快にして爽快。それでいて、この堕落&腐敗しきった世の中で、それでも希望の光を求めて共に生き抜かんとする、若い男女の切ない恋物語としても立派に成立している。
三角マークが似合う、三池版『トゥルー・ロマンス』
『孤狼の血』に続く、三角マークが似合う東映作品。『ガルヴェストン』で観たばかりの余命わずかな孤独な男と少女との純愛物語という鉄板な設定を、懐かしのVシネ感で魅せ切る、三池崇史版『トゥルー・ロマンス』である。終始、危険な色気が漂う窪田正孝はもちろん、トリックスターな染谷将太など、どハマりすぎる面々が演じるキャラ対決。復讐の鬼と化すベッキーもハーレイ・クインばりに確かにスゴいが、ディーン妹こと藤岡麻美(ex.チェキッ娘)の存在感たるや三池組初参加とは思えないほど。海外では歓喜と爆笑に包まれるポップなクライマックスは賛否ありそうだが、そこも含め、ケレン味溢れる三池ワールドである!
監督の魅力が成功と出た。タイトルがボディブローで効いてくる
このところ三池崇史監督は人気コミックの無謀な実写化などで酷評されてきたが、こうしてオリジナルで、方向性がきっちり定まれば、いかに「まとまった」作品になるかを鮮やかに証明。強烈キャラや場所が入り乱れる構図も、一見、複雑のようで整理され分かりやすいし、突発的バイオレンスのタイミングと本気度、俳優たちのテンションの高低差による化学反応、「作り物」映像の挿入……と、映画的興奮を高める隠し技が冴えわたっている。染谷将太の胡散くささは、ちょっと早いけど、今年の助演男優賞確定にしたいほど!
観終わった後、初恋の切なさ、いじらしさで胸の奥が温かくなる。ここに多様な観客へのアピールも込められ、心にくいばかり。