聖杯たちの騎士 (2015):映画短評
聖杯たちの騎士 (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
流れるような映像美に身を委ねたいT・マリック版『甘い生活』
ハリウッドで成功した映画脚本家を主人公に、その虚飾に満ちた享楽的な日々と内面に抱えた孤独や空虚を描く。さながらテレンス・マリック版『甘い生活』だ。流れるようにイメージを積み重ねていく映像の美しさは相変わらず健在。たとえマンネリと言われようとも、これこそマリック作品の醍醐味だ。
依然として彼のベストは『ツリー・オブ・ライフ』だと思うが、それでもなお、この世界や人生を主観的な印象で鮮やかに紡ぐマリックの感性に身を委ねるのは至福の体験。無論、好き嫌いは分かれるだろう。豪華な主要俳優陣もさることながら、ライアン・オニールからジョエル・キンナマン、セルゲイ・ボドロフに至る多彩なカメオ出演も要注目。
柔かくなめらかな映像にただ身をまかせて
音楽に身をまかせるように、ただ映像に身を委ねて漂うことの至福。そうやっていると主人公の心情が静かに伝わってくる。タイトルは、タロットカードの"杯の騎士"のこと。冒頭で、この騎士のようにひとりの王子が宝を手に入れるために旅に出たことが語られて、この物語の主人公が、さまざまな旅を経てすでに若くなくなった王子であることを伝える。彼は、かつて訪れた時と場所、そこで手に入ったかもしれない宝の間を、ゆるやかに漂っていく。
その漂いを映し出す名手エマニュエル・ルベツキの映像は、つねに柔らかな光に満ちてなめらかなまま、波のように風のように、色と形を変え続ける。その緩やかさ、滑らかさに陶酔する。