G.I.ジョー バック2リベンジ (2012):映画短評
G.I.ジョー バック2リベンジ (2012)ライター4人の平均評価: 2.5
アクション映画じゃなくコメディです
テロ組織が米国大統領になりすまして悪事を働くのは、サシャ・バロン・コーエン主演『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』のオマージュ!? そのニセ米大統領がサミットで“核のボタン“を押して他国の首脳陣が「じゃ、ウチも!」と慌てて追随するなんてビートたけしのお笑いを見ているかのよう。いや、こんなレベルの低い笑いはたけしさんに失礼か。その発射された核ミサイルの処遇を巡る描写もお粗末で、終始失笑が止まらなかい。なので途中から、大金をかけたコントなのだと自分に言い聞かせて何とか完走。それにしても『エクスペンダブルズ』に『ダイ・ハード』にって、ブルース・ウィリスもいまだ肉体を酷使させられていて大変ですな。
アクションに身を委ねるだけ! それだけ!?
弾丸より速く動け! ワイヤーに吊るされたまま断崖絶壁で戦え! ホワイトハウスを乗っ取れ! ロンドンを爆破しろ! スペクタクルを連ね、ひたすら凄みで押す豪快さ。前作の主人公をあっさりフェイドアウトさせることからも明らかだが、ドラマが前作の続きであるというこだわりがなく、一作目を見ていなくても十分楽しめる。とはいえ、続編として見ているファンには、アトラクション的な要素が強めで、ドラマがおろそかになっている点はいただけない。何も考えず、ただ体感する分には十分楽しいのだが……。
前作の反省点を踏まえた戦隊ヒーロー大戦
後半になればなるほど、ダルダルだった前作。その敗因理由を考えれば、キャラがあまりに多すぎて、ストーリーに収拾つかなくなってしまったからだろう。その反省を踏まえてか、ヒーローVS悪役、そしてイ・ビョンホン!と対立構造を明確にさせた。そして、ストーリー展開は、完全に戦隊ヒーローもの。オリジナルに何の思い入れもない、ジョン・M・チュウ監督を起用したのも成功要因。だからこそ、何の躊躇なくG.I.ジョーを壊滅させ、出世作『ステップアップ』シリーズのダンス・シーンのように軽やかなアクションを演出。ここまで徹底してやってくれると気持ち良く、何を演っても同じなドウェイン・ジョンソンのことなんて忘れられる。唯一文句を言うとするなら、断崖絶壁のシーン程度しか感じられなかった3D効果。この程度で公開延期すんじゃねぇ!
ぶっそうな方向へパワーアップしたマッチョイズム
四年前(2009年)のシリーズ第一作は「おバカ映画」の珍作として楽しんだのだが、あの時はまだ世界が多少呑気だったのかもしれない。しかしこの第二弾は、北朝鮮の核兵器開発などでピリピリと緊迫化する現状を受けてか、単にぶっそうなタカ派アクションへと嫌な方向にパワーアップした。その意味でのハイライトは、合衆国大統領が核保有国の首脳たちを召集して、幼稚な脅し合いを繰り広げるシーンだろう。もし風刺の視点が明確なら、『モンティ・パイソン』的なブラックジョークとして機能するのだろうが、強圧による抑止に「アメリカの本気」を感じるのでゾッとするだけで笑えない。娯楽映画としても動脈硬化で血管がブチ切れそうな一本調子の3D映像が続き、何から何までマッチョイズムのかたまり。正直疲れた……。むしろテレビ画面の方がラクに観れる気がする。