ヘラクレス (2014):映画短評
ヘラクレス (2014)ライター6人の平均評価: 2.8
英雄伝説の裏側に想いを馳せる史劇アクション
神の子とされるギリシャ神話の英雄ヘラクレスが、実は普通の人間だったら…というアイディアを基に、ヒーロー伝説の光と影に焦点を当てた史劇アクション。
ストーリー展開はかなり大味。だが、アーサー王やヤマトタケルなど歴史上の英雄伝説の裏には何らかの理由や真実が秘められており、本作の場合は傭兵軍団のボスとして伝説を戦略活用していたヘラクレスが、やがて権力に虐げられる名も無き人々の代弁者として真のヒロイズムに目覚めていく点が興味深い。
また、やけに自虐的な預言者を演じるイアン・マクシェーンの巧さも光る。若い頃はキザな二枚目ぶりが少々鼻についたが、年齢を重ねて渋みと悲哀を兼ね備えた良い役者になった。
80年代筋肉映画へのオマージュだけは感じます。
原作のアメコミがこういう設定なのだがら、嘆いてもしょうがないですが、ロック様が奇抜なクリーチャー軍団とガッツリ戦う展開を期待すると、アッサリ裏切られます。しかも、バトルは団体戦がメイン。『300』以降の女性も楽しめる筋肉映画の作りになっており、これじゃ二番煎じを狙った『ザ・ヘラクレス』の方がヘラクレスっぽいという有様。『300』を意識しまくった戦闘シーンもあるなか、「なるほど!」と思わされたのが、ハイスピード撮影も映像加工もできない80年代に撮られた『コナン・ザ・グレート』『レッドソニア』などへのリスペクト。こういうことをサラリとするから、ブラッド・ラトナー監督は嫌いになれない…。
筋肉バカ、ばんざい!
『300』ブームの流れを組む、ギリシャ神話+筋肉=男汁100%アクション。だが英雄ヘラクレス激動の人生は、ドウェイン様の筋肉を披露するための格好の素材でしかない。むしろ「やっと会えたね」(by辻仁成)という組み合わせか。
見せ場は、ヘラクレスが挑んだとされる12の難業。魔物相手にドウェイン様が死闘を繰り広げるのだが、凶暴な番犬ケルベロスに、水蛇ヒュドラ、人喰猪エリュマントスと相手に不足ナシ。しかし忠実に実写で再現されると、こうも笑いが込み上げてくるのは何故だろう。はからずしもギリシャ神話が、いかにぶっ飛んだ話かという真髄を晒しているワケだ。B級を装い、意外に奥が深い。かも?
こんなロック様を見たかった! 爽快ヒーロー活劇
ヘラクレスはギリシャ神話に名高い半神半人の英雄で非現実の存在とされているが、そんな彼を現実の存在として描いたのが本作。英雄の側面はあるもののアウトロー的なキャラも映え、なかなか面白い作りとなっている。
神話に名高い怪物退治の逸話は語り部によって語られる程度で、本当かどうかはわからない。そこに負け犬的ないかがわしさを漂わせつつも、怪力とガッツの持ち主であるのは間違いなく、戦闘での頼もしい活躍ぶりに目を奪われる。
『スコーピオン・キング』以来の古代キャラにふんしたドゥエイン・ジョンソンは筋骨も勇ましくハマリ役。泥臭くも爽快なヒーロー活劇として支持したい。
これで『七人の侍』は無理でしょう。
僕が勝手に「大味大王」と名付けてるB.ラトナー、久々の長編登板だがコクの無さは相変わらず。原作がそういう設定なら致し方ないが、ヘラクレスが100%人間だなんて、それで果たしていいのか? かといって神話に対する脱構築的な見方があるわけじゃなし、これじゃ「コナン」シリーズとさほど変わらぬ異界の蛮勇もの。敵役に本物ヘラクレスを登場させて対決させるくらいじゃないと題名に偽りあり、ってもんだ。神話の設定を踏襲しながらあくまで人間性にこだわった『ザ・ヘラクレス』のほうがまだしもな出来。ま、最後に毒づきまくるJ.ハートは大した貫禄だが、このテの映画にしては珍しいR.シーウェル、P.ミュランもさほど目立たず。
なにしろ愛用の武器が"棍棒"だし
冒頭のヘラクレスの偉業の映像美で、掴みはOK。そして、"ギリシャ神話のヘラクレスの偉業が、もしも実際に起きた出来事だとしたら"というコンセプトが新鮮。このコンセプトに沿って、アクション演出もVFXよりも筋肉重視で肉弾戦を強調。その象徴に、主人公が愛用する武器も"棍棒"だ。さらに、このジャンルの映画なのに、あえて「300」式の速度加工や質感加工を使わない。「こんなことがあったかもしれないという説得力」と「ビジュアル映えする派手な映像スペクタクル」、双方のバランスの取り方が絶妙。
ちなみに7つの偉業の総ては本編では描かれないが、偉業の舞台裏がエンドロールの背景画で図解されていて、これも楽しい。