ハングオーバー!!! 最後の反省会 (2013):映画短評
ハングオーバー!!! 最後の反省会 (2013)ライター5人の平均評価: 3.2
卒業はめでたいが尻すぼみは殘念
シリーズものを観る場合、観客はお約束を期待する。『ハングオーバー』シリーズなら、旅とマイク・タイソンとエンディングに流れる泥酔中の彼らの姿態を写した写真。旅はかろうじてクリアしたものの、あとの2つがなくてガッカリ。1作目がまさかのヒットをし、主演のブラッドリー・クーパーをはじめ今や皆、売れっ子。シリーズ化は“大人の事情“であって、今更彼らが再びおバカ・コメディに挑むのは無理があったのだろう。ゆえに今回の話は、メンバーの問題児アラン(ザック・ガリフィアナキス)の成長物語。それはそれで、見続けたファンにとっては納得行くが、血生臭い展開で正直、笑えない。いっそ最後は、パーッと派手にいって欲しかった。
アルコール抜きではハジケが足りない?
“二日酔い”のタイトルに反して、今回はアルコール抜き。前2作の大騒動のその後という大局的な意味での“二日酔い”ととれなくもないが、それでも酩酊の振りきれたテンションがないと勢いも落ちる。結果、酔わなくも十分イカレているアランとチャウだけがドラマを引っかき回し、前2作で保たれていた“狼軍団”のバランスが崩れてしまったのは惜しい。アランがきちんと成長した点に、シリーズのファンとしては美しさを覚えるのだが……。
これはファンへの裏切りか、それとも製作陣の限界か
監督の力というより、脚本の勝利だった1作目。脚本の力というより、キャラの勝利だった2作目。つまり、トッド・フィリップス監督の腕は、お世辞にも上手いとはいえない。それを踏まえた完結編とはいえ、お騒がせ男・アランの結婚がキーワードにして、ここまでシリーズの流れをブチ壊すのはいかがだろう? 原点回帰という見方もできるが、2作目が完全にファン感謝祭だったことを考えると、これは裏切りにも、製作スタッフの限界にも取れる。売れっ子になったキャストも、2作目ほど心の底から楽しんで演じているように思えないし、ヘザー・グラハムの再登場もおざなりにしか見えない。この尻つぼみ感と自身のムリヤリな納得感は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』以来だ。
キリン映画としてヤバい!
良くも悪くも、ザック・ガリフィアナキス演じる問題児アラン(今回42歳という年齢設定が判明。おっさんやん!)の幼稚性がいきなりフルスロットルになる冒頭のキリンのシーンがいちばん印象的だろう(笑)。単純にドン引きする人も多いかと思うが、全体はアランの遅すぎる成長譚という枠組みでウェルメイドにまとめている。ただし「普段は社会的に機能している男たちがハメを外しまくる」という一般的なモラトリアム男の共感を呼ぶ第一作目と第二作目のフォーマットから離れ、アランとマフィアのチャウという二大凶悪キャラを前面化した作りのため、シリーズ中、最もアクは強いかもしれない。賛否両論が起こるのは承知のうえで、それなりに攻めの姿勢でフィナーレを飾ったことに拍手。第二作から引き続いてのビリー・ジョエルのネタも絶妙な悪意があって面白い。
フィナーレを飾るに相応しい荒唐無稽なお祭り騒ぎ
あの狼軍団(ウルフパック)がまたもや帰ってくる。ただし、今回は二日酔い&記憶喪失というお馴染みのパターンをあえて踏襲せず。メンバー最強の問題児アランを中心に、過去の尻拭いをさせられる羽目になった彼らのハチャメチャ珍道中が描かれていく。もちろん、ミスター・チャウも健在。というか、ほとんどアランとチャウが主人公と言ってもおかしくないだろう。不謹慎かつお下劣なギャグも含め、この2人の凶悪な大暴走ぶりがとにかく抱腹絶倒。シリーズのフィナーレを飾るに相応しい(?)荒唐無稽なお祭り騒ぎに仕上がっている。ちなみに、ガーナー家のママ役ソンドラ・カリーは、知る人ぞ知る’70年代のB級セクシー女優。しかも、あのランナウェイズのボーカリスト、シェリー・カリーの姉ちゃんだ。