スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (2015):映画短評
スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (2015)ライター9人の平均評価: 4.3
手放しで「凄い!」と言い切れぬもどかしさ…。
『SPACED』であれだけ『ファントム・メナス』をクサしまくったサイモン・ペッグが、前知識なしではまったく本人とは判らぬモーション・キャプチャー・キャラで出ている。とにかくエピソード1~3に幻滅した者(僕を含む)にとってはウキウキしっぱなし、「観たかったものを観ている」という充実感はかなりある。しかし同時に「あまりにもエピソード4と5をなぞり過ぎじゃないの?」という思いに駆られるのも否定しがたく、このあと2作続くはずだが新しい発展は可能なのか、と不安にもなるってもんだ。『ザ・レイド』チームのアクション指導もあまり効果を発揮しているとは言い難いしなあ。ともあれ復活ルークに期待を繋ごう。
あの原体験の興奮を今に蘇らせてくれる新3部作の出発点
僕らの見たかったスター・ウォーズが帰ってきた。とにかく、この一言に尽きるだろう。確かにEP4~5を焼き直したようなストーリー展開は先が読めすぎるけど、しかしこの単純明快な宇宙冒険活劇のワクワク感こそ、あの原体験の興奮や喜びをまざまざと今に蘇らせてくれるのだ。
もちろん、その既視感が賛否を分けるポイントにもなり得る。ファン心理を意識しすぎた結果の安全策ではないのか、ただのオマージュに過ぎないのでは、などの疑問も浮かんでこよう。だが、あくまでもここは新3部作の出発点。その幕開けを晴れやかに宣言するという意味において、シリーズ原点にリスペクトを捧げたJ.J.エイブラムスの選択は正しいと思う。
手抜かりなし!
これは最優秀のフォロワータイプであるJ.J.の実力が最大発揮された一本ではないか。ファン目線で批評的に作り込み、無難を超えて完璧。旧三部作への回帰と、時代に合わせたアップデートの両方を抜群のバランスでブチ上げている。映像もアナログな物質性を大切にし、模型フェチ心を超刺激する「よくできたジオラマ」感がたまらん。そりゃトミカとか買っちゃうでしょ!
リブートの方法論としては、ファーストの物語構造を新しい装いで変奏し、配役はレジェンドとニュースターを共存させるなど、やはり『ロッキー』の同じくエピソード7=『クリード チャンプを継ぐ男』と重なる。今ってオリジネイターより“文化的二世”有利の時代だなあ。
違う意味で涙…
なんだ⁉︎胸のざわつきは。
新作完成の高揚感より、押し寄せてきたのは悲哀。
傷だらけのミレニアム・ファルコン。
埃をかぶっているR2ーD2。
さらに年相応のハン・ソロやレイア姫も登場。
我々にとっては空白の時間も、
彼らはずっと戦争を続けてきたのだという事を説得力を持って突きつけられた。
過去の設定でも、SWに未来を見てきた。
空想の世界と現実世界が近づいてしまった虚しさと寂しさもある。
この不毛とも言える争いにどう決着をつけるのか。
我々の混迷する社会の未来を占うためにも、最後まで見届けてやろうじゃないか。
熱狂的なファンならずとも、その気にさせられた力作である。
このスピード感は「スター・ウォーズ」史上最速!
本作がサーガに導入したものは、なによりも"スピード感"。まず物体の運動速度。X-ウイング群の飛翔も、ライトセーバーのバトルも、速い。そして物語の展開速度。ドラマが停滞することなく、どんどん進む。
そのうえ旧作ファン感涙の「EP4」「EP5」のアイテム、台詞、場面が、予想以上に大量。そのせいもあり、物語も「EP4」「EP5」のアレンジ版として見てしまうが、その観点から見ても面白いように作られている。
とはいえ、主軸は新たな主人公たちによる新たな物語の始まり。まだ解明されていない謎が多いうえに、新たな謎も増え、この「続きを見なくちゃ」感が、TVシリーズで鍛えたJ.J.エイブラムズ監督の腕?
さすがJ.J.! 彼が少年時代に受けた感動が伝わってきたよ!
壮大なサーガを担うプレッシャーにJ.J.エイブラムズ監督は見事に打ち勝った! 父子の確執はもちろん、ミレミアムファルコンの登場のさせ方やX−ウィングのドッグファイト、カット割り&フレームサイズなどの撮り方までエピソード4へのリスペクトで満ちあふれている。10歳のJ.J.少年の心に刻まれた感動を共有したようで、こちらも胸がほっこり。もちろんBB-8をはじめとする新キャラも魅力たっぷりだし、旧作とのつなぎに無理がないのはシリーズを愛する脚本家が物語をしっかり練ったから。ヒロインの生い立ちの謎などの布石もあるし、フィン&ポーのやおいな友情にも興味津々で、エピソード8&9が待ち遠しい。
活劇の“軽み”を取り戻しつつ善悪入り交じる新世代の神話を志向
エピソード4を魅力的なものにしていた、いい意味でのB級アクション映画としての“軽み”を取り戻しながらも、過去6作とは趣の異なる、善と悪が入り混じった神話としての世界観が、二元論では割りきれない今の空気を捉えている。
逃亡、屈折、そして失踪。誰もが皆、アイデンティティを模索し、葛藤している。旧三部作の懐かしきキャラクターたちを前面に押し出しすぎることなく、拠り所を喪失した新世代の迷いや決意を輝かせることに成功している。
前半は演出的な運びにもたつきがあるが、もはや伝説的な人物であるルークの存在を核とした真っ直ぐな脚本が、すべてを牽引し、いくつもの謎を散りばめつつ力強くラストへと向かう。
『新たなる希望』の・ようなもの
さすがヲタ心を掴むのが巧い、J・J・エイブラムス。危ない橋を避け、行方不明のルーク探しを軸に、『エピ4』のリブートかと見違えるほどのオマージュ大会にしたのは大正解。絶妙なタイミングで次々出てくる、あのキャラに、あのシチュエーション。全編『SW』愛に溢れ、「文句言わせねぇよ」という気合いを感じるが、『の・ようなもの のようなもの』とのカブりっぷりが偶然すぎて笑える。また、ボンクラ息子を更生させようとするオヤジ奮闘記や、やっぱり三角になりそうなトワイライター萌えを狙った展開など、今後に繋がる伏線も楽しめ、訓練シーン早よ!と言いたくなる135分。ただ『ザ・レイド』組の使い方、疎かすぎやしないか?
丁寧なシリーズ再生に、ただただ感謝!
シンデレラ城もバッド・ロボットのクレジットもなくルーカスフィルムのロゴで始まり、“A long time ago~”のテロップ、タイトルとあのテーマ曲! アドレナリンが沸き立つのは、ほとんど条件反射。
エピソード4~6のオマージュを盛り込みつつ、冒険活劇の基本を踏まえて新たなドラマを創造。とびっきりドラマチックかつ衝撃的な逸話もある。丁寧に世界観を構築していることに、ファンとしては、ただただ感謝。
とはいえシリーズの敷居は決して高くない。ヒロインや脱走兵ら若い主要キャラは“ジェダイ”も“フォース”も話しか聞いたことがない……という設定なので、若い観客には目線を置きやすいはずだ。