テルマエ・ロマエII (2014):映画短評
テルマエ・ロマエII (2014)ライター5人の平均評価: 3.4
フジテレビがバブル時代のようなパワーを発揮している!
第一作の成功体験を踏み台に映画独自の方法論を強化。前作は長編への「引き伸ばし感」が最大の弱点だったが、今回はタイムスリップのつるべ打ち&大量の特濃キャラ投入とぬかりない。ユルい空気感を保ちつつ、実は密度が濃い“怪力”系だ。
そうなると「このマンガの古代ローマ人さあ、阿部ちゃんがやったら面白くね?」という居酒屋話的な思いつきから、古代ローマ帝国の疑似再現へと発展させてしまった本作の「壮大なフェイク」としての特異さが本格的に際立つ。これは好景気な頃のフジテレビ、『オレたちひょうきん族』などを彷彿させる豪快な悪ノリ。TVバラエティが微温的に縮こまっていく中、フジは映画でそのパワーを発揮したのだ。
前作のヒットでより自由に、より大胆に
前作の自信が、至るところに溢れている。タイムスリップする描写はぞんざいに。松島トモ子まで引っ張り出した古めのギャグも、若者が理解しようがお構いなし。良い意味の開き直りがさらに笑いを呼び、かつ原作から一歩はみ出た独自の世界を構築。オリジナルキャラ真実の存在も含め、原作ファンも納得する展開になっているのではないだろうか。
ただ、やはり実感するのは原作の着眼点の鋭さだ。同じ風呂文化を持つ古代ローマと日本を結びつけた空想の豊かなこと。そしてルシウスが驚くハイテク日本の数々は、現代の外国人が来日して衝撃を受ける事柄と同じだ。時代を超越して共感出来るところが、本作が海外でも支持される理由なのだろう。
風呂好き日本人の入浴文化と阿部寛の肉体に拍手!
銭湯や温泉に代表される日本の入浴文化は世界に誇れると常々思っている。シャワーな国の人に「心臓に悪い」と言われても、温かいお湯に肩まで浸かる喜びは捨てられない。この快感を理解する古代ローマの浴場設計技師ルシウスが再び我々のテクを学んで行く展開は相変わらずで、「もうネタ切れでは?」というこちらの心配をよそに、次々に直球や変化球を投げてくる製作陣の情報量にちょっと感動。ゆるい笑いが絶え間なく続く構成ももはやお家芸で、松島トモ子と熊が露天風呂であわや!?なんて下らないギャグにも素直に笑えたのはお風呂に入った気分を味わえたせい? 前作を超えるボディメイキングをした阿部寛の根性で★1つ追加。
やっぱりお風呂とオペラはよく似てる
おフロとオペラの真髄は同じ。どちらもただ全てを委ねて身を任せるしかなく、そうしていると快感が押し寄せてくる。
前作同様、古代ローマ人の主人公が現代日本にタイムスリップするときは、いつもオペラ歌手がイタリアオペラを歌い上げるのだが、そのたびにそう痛感。この演出は、原作コミックにはない映画オリジナル。こういうオリジナル演出が、原作のツボを押さえてるところが、本シリーズのステキなところ。
今回は前作でウケたネタの数々もひとヒネリされて再登場。多機能トイレも献身的な奴隷たちも帰ってくる。主人公が日本から「フロで歌うと治癒力が増す」と把握したある歌を持ち帰るのは、このオペラネタのヒネリ?
いか八朗と日本猿のユルみっぷりが本質かと。
本場ローマのチネチッタで撮った前作をも凌ぐ、ブルガリア・ロケのスケール感。水増しCGを差し引いてもちょいと感動モノだ。だけどあまりにぬるま湯的な、ゆるゆるスカスカは相変わらず。前作は中盤からの唐突すぎる風呂敷の拡げまくりに白けたが、ま、今回は原作が似た展開になってもいるし、上戸彩の立ち位置にもおなじみ感が生じて意外にすんなり受け入れられる(というより諦めに近いか)。それにしても、白木みのるに松島トモ子、そして浪越徳治郎……ま、僕は全部判るけれど、いったいどの世代をターゲットにしているのか得体が知れなすぎてクラクラするが、かなり大きな役を与えられたいか八朗が醸し出す異次元空間だけはかなりの凄味。