トイ・ストーリー4 (2019):映画短評
トイ・ストーリー4 (2019)ライター7人の平均評価: 4.6
『シャイニング』『フランケンシュタインの花嫁』の予習を。
美しく完結していた「3」のあと、どうするんだろうと思ったら、玩具仲間の物語を離れて、なんとほとんどウディの冒険行へシフト。しかも自己卑下のカタマリで「ご主人さま」に愛されているのに愛されるのを拒否するフォーキーと、「愛されなくなったことから偏執的な妄念に囚われる」ギャビーという、かなり不健康なキャラとの物語になるが、これがやがて共感度満点のハートウォーミングな地点へと導いていく脚本が流石。これまでも今回も、あんなに「ご主人さまのため」に滅私奉公していたウディまでがこんな道を!なラストにはまったくもって驚くけれど、いやこの先も観たくなるじゃないか。懐かしや「ビバ・ニーベル」の登場には笑った。
トイ・ストーリー史上最も奥が深い感動作
子供に愛されることだけがオモチャの幸せだと信じていたウッディが、思いがけず巻き込まれた冒険の旅を通じて、人生には(たとえオモチャであったとしても)幾つもの選択肢があること、世の中には様々な幸せの形があることに気付いていく。大人の鑑賞に堪えうる物語は『トイ・ストーリー』シリーズの魅力のひとつだが、中でも特に今回は奥が深いと言えよう。自分をゴミだと思っている新キャラ、フォーキーや、新たな装いで復活したボー・ピープの描写にも含蓄がある。なお、字幕版の声優にはメル・ブルックス、カール・ライナー、キャロル・バーネットらが登場し、古き良きアメリカンTVコメディへのオマージュが捧げられている。
フォーキー好きだわ~
1995年から2010年に至る三部作は、フルCGアニメというジャンル自体の最先端の推移とぴったり重なっていた。だが現在その技術は既に成熟しきっているわけで、今回の鑑賞姿勢としては、まずこちらの適切なモードチェンジが必要かと思う。お話も「脱アンディ」後の諸々、特にラブストーリーへと方向を変えて順調に走行していく。
新キャラの白眉はボニー自作にして最愛のフォーキー! 彼のアイデンティティが「ゴミ」から中々離れないのにウケた。本シリーズの人間とおもちゃの主従関係を人種や階層の喩として読む視点があるが、幼稚園で疎外されたボニーとフォーキーの分身性や内的な絆は確実に新たなニュアンスを加えているだろう。
オモチャが幸福でいられる世界が嬉しい
シリーズで初めて、オモチャが所有者とは別に幸福になれる世界が描かれる。そういう世界が出現したことで、オモチャたちも、かつて愛するオモチャを所有したことがある者たちも、幸せな気持ちになれる。そんな世界を描いてくれたこのシリーズに、ただただ感謝の気持ちでいっぱいになる。
そしてその世界に至るまでの、カウボーイ人形ウッディの成長の物語でもある。ウッディに、彼がこれまで信じてきた価値観が試される時がやってくる。そして彼は自分とは異なる価値観があることに気づく。そのとき彼はどのように行動するのか。いつものようにオモチャたちの楽しいお話でありつつ、今回はさらに大きな深い感動を与えてくれる。
強い女子キャラ、アホな男子キャラ
奇しくも『ペット2』と同じく、中盤からバケーションな展開となるが、さすがはピクサーというべき脚本の巧さ。確かに、まさかのジョン・ラスター降板の4作目ではあったが、「この手があったか!」と唸らされるラストまでの流れが、じつに絶妙だ。自立した女性として再登場するボー・ピープに加え、恐ろしい女ボスの顔を持つギャビー・ギャビーと、ここでもやっぱり女子キャラ強し。反対に、限りなくイーブル・クニーブルなデューク・カブーン(キアヌ熱演!)に、誇大妄想止まらぬダッキー&バニーといった男子キャラは、おバカ丸出し。ただ、このメリハリがしっかり泣けるラストに繋がっているからズルすぎ!
この4作目は必要だった!
完璧な形で三部作が終わったと思っていたのに、なぜわざわざ4作目を作るのか。その疑問と不安は、見れば完全に払拭される。あのままで終わるのも、もちろん全然アリなのだが、バズがアンディの子供部屋にやってきてウッディが嫉妬するところから始まったこのシリーズには、これが本当に意味をなすのだ。ユーモアとアクションをたっぷり盛り込みつつ、1秒も無駄にすることなくストーリーをどんどん先に推し進めるのは、いつもながらさすが。そして最後には、3作目の号泣とはまた違う、もっと甘く、ちょっとだけ切ない涙が待ち受けている。最高に素敵なラブストーリーかつ友情物語だ。
ロマンティックが止まらない
毎回、おもちゃキャラの話に、いい大人が感動するわけにいかない…と冷静に構えるのだが、今回も容赦ない吸引力に抗えなかった。
人間に見られてはいけない「鉄則」は過去作以上に各シークエンスに生かされ、作品の楽しさを加速する。アンティークショップ内部を駆使したアクションの構成力。不気味なキャラにも惹かれる人間の本能。そして夜の遊園地が作り出すロマンティックな背景が、極上のアートと最高の物語の出会いを証明する。ライティングの美しき魔術!
キアヌ・リーブスがどんな表情で声を当てたのか想像するだけで微笑ましいし、トム・ハンクスの声にはさすがに年齢を感じるも、それもシリーズ24年の歳月と重なってしみじみ。