オー!ファーザー (2014):映画短評
オー!ファーザー (2014)ライター3人の平均評価: 2.3
父親4人と一人息子の絆に説得力なし
ちょいワルな父ちゃんに熱血スポ根な父ちゃん、超秀才な賢い父ちゃんにイケメンで洒落た父ちゃん。全くタイプの違う子煩悩な父ちゃんが4人もいたら、息子にしてみりゃ少々ウザイかもしれんが、それでもやっぱり頼もしかろうし楽しかろう。
それはよく分かるのだが、残念ながらこの風変わりなファミリードラマに説得力を持たせるだけのハッタリ感が本作は決定的に欠けている。あくまでも日常の延長線上を狙ったであろう地元裏社会の陰謀とか武装集団の拉致事件なんかも茶番にしか見えず、しょぼい救出劇に至っては苦笑いしかできず。
ストーリー構成や編集にも難あり。右往左往するばかりで、作品全体のリズムをまとめきれていない。
もっと必死で映画を勉強しましょう。
作品のテンポが致命的。勿体ぶった演出ではないが、前へ前へと進むドライヴ感がまったくない。ポップを気取った素人同然だ。伊坂幸太郎原作ものだから、些細なファクターが後で意味合いを増し、それらが重なり合ってクライマックスを築く……というモザイク的構成であろうことは、熱心な読者ではまったくない僕でも中村義洋監督作を通して予想がつくし、本作に関してもそのセオリーは当てはまるが、あまりにも演出・編集の流れが悪く(クライマックスは笑止)、個々のエピソードが呼応しあうという物語の流れがとうとう生まれることがない。そもそも大前提としての「4人の父」という設定に、ただ気色悪さしか感じさせないのはどうなんだ。
こんなオヤジなら、何人いてもいい!?
家に父親が4人いる、そんな高校生のドラマ。奇抜な設定を“狙い過ぎ”と思う方もいるかもしれないが、これがなかなか楽しめる。
何より魅力的なのは4人の父親のキャラクター。大学教授、ギャンブラー、元ホスト、体育教師等々、個性的な面々がそろい、息子に教えるべきこともそれぞれに異なる。知識、女性との付き合い、臨機応変の生き方、そしてケンカ術。4対1の奇妙な父子関係をコミカルに描きつつも、それぞれの愛情が垣間見えて、何とも魅力的に映る。
伊坂幸太郎原作の映画の常で、正直サスペンスとしては弱いが、父子ドラマの面白さはそれを補って余りある。こんな面白い父親たちがいるなら、奇抜な家庭も悪くない。