監視者たち (2013):映画短評
監視者たち (2013)ライター3人の平均評価: 4
オリジナルへのリスペクトがハンパない!
特殊組織監視班に配属された女性の成長を軸に描く、ジョニー・トー製作『天使の眼、野獣の街』の韓国リメイクだが、オリジナルへのリスペクトがハンパない。『男たちの挽歌A BETTER TOMORROW』での南北問題のような、お得意要素を絡ませない潔さはもちろん、ちゃんと“街”をもうひとつの主役に据え、香港より広いソウルの地形や交通を生かしたアクションが展開。一方、オリジナルに登場しないジュノ演じる若手刑事や、鉛筆から万年筆に持ち替え、よりカリスマになったチョン・ウソン演じる宿敵など、韓流スター映画としての見せ場もしっかり用意。これらにより、オリジナルより30分長尺になったが、あまり気にさせない。
チョン・ウソンの悪役は最大の収穫かも
誰にも気づかれないよう人ごみに紛れ込み、犯罪者などターゲットの行動をつぶさに調査する韓国警察の監視班が主人公。で、そんな彼らとプロ犯罪集団の頭脳戦が展開する。
ともすると地味になりがちな“監視”という捜査法だが、担当チームによる巧みな連携プレーと緊迫する追跡劇を、複数のカメラを駆使した大胆なロケ撮影によってテンポ良く描く演出はお見事!ソウル中心部でのド派手なカーアクションも迫力あり。恐らく東京だったら撮影許可が下りないはず。
また、主犯格をチョン・ウソンが演じたのもいい。ハンサムでクールなアンチヒーローといった風情で、実は意外にいい人なんじゃ?と思わせておいての極悪非道ぶりが効果満点だ。
チョン・ウソン、キャリア初の悪役を見逃すな!
容疑者の行動監視をする特殊チームの監視体制の描き方がスリリングだ。監視カメラや携帯電話の通信網を駆使するが、最終兵器は人海戦術。街角に溶け込んだ班員が連係プレーで容疑者を追う。クロスカットを効果的に使い、緊張感を高める演出が心憎い。班長役のソル・ギョングは、凡人に見えて実は鋭いという知性派キャラが意外にお似合い。そしてもちろん、監視網をくぐりぬける凶悪犯役のチョン・ウソン! セリフは少なく、冷ややかな瞳でものを言うサイコっぽい悪役なのに魅力的。狭い路地で次々に襲いくるチンピラを一人でなぎ倒す場面は『オールドボーイ』のチェ・ミンシク兄貴に次ぐかっこよさ。このシーンだけでも1800円払う価値アリ!