るろうに剣心 伝説の最期編 (2014):映画短評
るろうに剣心 伝説の最期編 (2014)ライター5人の平均評価: 4.8
アクション監督・谷垣健治に敬礼!
めっちゃ感動した! 特に炎を噴く志々雄の無限刃をめぐって五つ巴になる甲鉄艦の戦いは日本映画活劇史に残る超名シーン。それだけに「アクション監督・谷垣健治」のクレジット小さすぎでしょ!と叫びそうになったよ!
今回の二部作が第一作から格段に飛躍したのは谷垣氏の仕事が前面化したからだ。香港経由の谷垣メソッドが日本映画に「新しい時代」をもたらした。フィジカルな気持ちよさを追求しながらアニメ的なデフォルメを効かせた演出が明らかにしたのは、実は日本の役者たちが高性能であること。彼らのポテンシャルを最大限に引き出し、問題は使う側と使い方だったことを示したのだ。
もう一度言う。日本の役者はこんなに凄い!!
チャンバラ映画の試金石となる入魂の完結作
前作でいやがおうにも高まった期待を一切裏切らないばかりか、それを遥かに超えてみせたことは賞賛に値するだろう。少なくとも、娯楽映画としては本年度邦画界の最高峰に位置する二部作の後編だ。
ストーリーに弱点がないわけではない。志々雄一味の謀略は相変わらずどこか脇が甘いし、総理大臣自らが敵陣にノコノコと出て行く明治政府の対応も杜撰。
しかし、スピードもテンションもマックス超えなチャンバラアクションに圧倒され、それぞれに宿命を背負った登場人物たちの濃密な人間模様に胸熱くなり、クライマックスの三つ巴ならぬ五つ巴の壮絶なバトルにしびれまくる。剣心の二面性を見事に体現した佐藤健の演技には凄みすら覚える。
『プロA』超えの驚異の志々雄バトル
高まった前作クライマックスから一転、静寂から始まるオープニング。その後も、ジャッキー・チェンの「拳シリーズ」にならないことを狙った“しっかり動ける”比古による修行シーンやら、ここで出してくるかの斎藤一の牙突やら、『プロジェクトA』のディック・ウェイVSジャッキー、サモ・ハン&ユン・ピョウ戦超えを狙った結果、もはや実写アクションの域を超えてしまった志々雄とのラストバトルまで、面白いぐらい狙いまくったシーンが連発。最終作にして、ようやくドラマとアクションパートの熱量を含む、バランスが均等になったことも喜ばしい。ただ、完全な“漢映画”となったため、操のアクションが皆無に等しかったのは、ちと寂しい。
虚無的に漂ってきた若者が覚醒し、生の輝きを掴む現代日本の神話
アクションとドラマが有機的に絡まり合い、止揚していく。俳優が練習に次ぐ練習の果て、身体の限界に挑む過激なノンフィクションとさえ言いたくなるほど、素速い動きと荒い息遣いと響き渡る鼓動が、観る者を高揚させる。福山雅治との師弟対決に始まり、藤原竜也との最終バトルまでの道のりには、佐藤健=剣心の苛烈な魂の軌跡がある。これは平和な時代を虚無的に漂ってきた若者が、ニヒリズムを超えて死中に活を見出し、戦いの真の意味に目覚め、生の輝きを掴む同時代の神話だ。この国の「不殺(ころさず)の誓い」が揺らいだ今年、ヒーローの葛藤は我々の身に重なる。大友啓史は大活劇で魅せつつも、重厚なテーマにまで果敢に斬り込んだ。
花も実もある堂々の完結編。
「前作は壮大な予告編だった!」とは古い惹句だが、全編を貫く怖ろしいまでのテンションと熱度の高さにひたすら煽られる三作目だ。明治政府成立に寄与しながらも彼らによって抹殺された「暗い澱」同志の対決というテーマはさらに顕在化し、まさに地獄の様相を呈する(ラストの「敬礼」の何たる苦々しさ!)。谷垣ガチンコ動作設計もかつてどの国の映画でも観たことがないスピードと密度に達し、蒼紫や宗次郎ら説明不足なキャラもその壮絶なアクションそのものが台詞以上に過去を雄弁に語る。基本、男たちの物語ゆえ女性の出る幕はほとんどないが、浜辺をさすらう武井咲、絶叫にすべてを籠める土屋太鳳がアクションと同等に映画を締めるのがいい。