インベーダー・ミッション (2012):映画短評
インベーダー・ミッション (2012)ライター2人の平均評価: 4
誰がいったい「インベーダー」なのか。
てっきりSFだと思いこんで観てみれば、イラク戦争を題材にしたハードなミステリだったのに吃驚。しかも、最近公開された『ワイルド・ルーザー』と同じスペイン人監督とはとても思えぬ出来映えにまた吃驚。失った記憶を徐々に取り戻してみれば恐ろしい真実が…という設定自体はありがちだが、記憶が飛んでた主人公以上に地獄を見続けていた人物の存在がより重く、誰がいったいイラク民衆から視た「インベーダー=侵略者」だったのかと真正面から問いかける展開に(本作に「ミッション」など存在しない)。ひょっとするとこれからの日本にも起こり得ることと覚悟して観るべし。皮肉にも『ワイルド~』よりカー・アクションの出来もいい。
蜂の巣をつつくってこういうこと?
イラク戦争の大義はうやむやになり、戦場で何が起きたかは当事者しか知り得ない。PSTDとなる兵士が多いのだからさぞや悲惨だったはず、と想像するのみ。そんな起きたかもしれない事件をミステリー仕立てで解き明かす本作の構成は、普通の戦争映画とはひと味違う。しかも物語を牽引するのが戦闘で記憶障害を負ったスペイン人軍医だから、「正義のためなら小悪はOK」的なアメリカンな視線はない。記憶を辿る主人公が医師としてのモラルや尊厳と向かい合い、葛藤するのが主軸となる。ウィキリークス設立以来、国家機密を明らかにしたがる声が大きいが、臭い物に蓋をしない正論が立てる波風の大きさを考えると複雑な気持ちになるに違いない。