アイ・フランケンシュタイン (2014):映画短評
アイ・フランケンシュタイン (2014)ライター3人の平均評価: 2.3
メアリー・シェリーの古典はいったん忘れましょう
原作はあくまでもグラフィックノベルであって、メアリー・シェリーの古典ではない。なので、怪物がそんなイケメンだったら別に世間から身を隠す必要もないのでは!?…と突っ込みたくなる気持ちも我慢しよう。昔ちょっとヤンチャしててね、くらいの傷跡は、ダークヒーローにとってむしろ勲章みたいなものだし。
とはいえ、人知れず人間社会を守っているはずのガーゴイルたちが普通に街中で大暴れするなど、基本設定の扱いがかなり粗雑でいい加減。その姿勢はキャラクター造形やストーリー展開にも見て取れる。
ただ、ゴシック風味なビジュアルは結構好き。暇つぶし程度には楽しめる、安手のB級ファンタジーアクションといったところか。
フランケン、お前まで。気の毒に。
冒頭、原作の結末が短く語られ、どう展開するかと期待させるが…それだけ。あとは食傷して久しい、別種族の時空を超えた闘争が繰り広げられる羽目に (この場合は悪魔vsガーゴイル族)。フランケン博士の手記を巡る物語なので原作を疎かにはしていないものの、悪魔側の言い分もイイカゲンで興味を持続させるにはかなり辛い。しかしガーゴイルの王女にミランダ・オットー、悪魔の王子にビル・ナイ(このヒト、心底こんなの好きなんだねえ。特殊メイクも嬉々として)、そして主役にA.エッカート。どちらかというと原作に近い、二枚目で俊敏で知性的な怪物像は過去にもあるので本作が特別ではないが、俳優陣の「格」で見せはする。
やっぱりゴシック趣味は定番にして真髄!
アシモフの「アイ、ロボット」と対になるタイトル通り、フランケンシュタイン博士に作られた怪物が、自分が彼の息子であることを認めるまでを描くーーという趣向は新鮮。
なので美術は逆に原点回帰。時は現代だが、ゴシック建築の寺院に天使に命じられて悪魔を討つガーゴイルたちが棲んでいる。そして、邪霊を祓うために醜い怪物の形に作られたガーゴイルたちの"悪霊のような容貌でありながらその対極にある存在"という性質が、死体を継ぎ接ぎして作られた怪物とシンクロする。
夜、地上に降りたガーゴイルが夜空を見上げると、巨大な満月の前をガーゴイルの群れが飛翔していく。そんな陶然とする光景に何度も出会える。