ザ・ヘラクレス (2014):映画短評
ザ・ヘラクレス (2014)ライター3人の平均評価: 2.7
「ザ」ってなんだ、「ザ」って(笑)。
マッチョではあるがベビーフェイス、ゼウス神の怪力もここぞという時にしか使わないヘラクレス像だ。横暴な父王に疎んじられ、卑怯な兄とその許嫁との三角関係に悩む人間臭さ。かつてのハリウッドでのR.ハーリン映画のようなバブリーな大作感はないものの、近年も着実にそれなりの作品を生み続ける彼のこと、剣戟シーンはもちろんドラマも疎かにせず退屈しない出来(いろんな過去作を思わせたり、ちと大味なところも、まあこのテの映画の常である)。3Dの効果については、アクション・シーンでのこれみよがしな部分も楽しくはあるけれど、ヘラクレスと姫が逢瀬する湖の水面の質感がなかなか美しい出来だ。
ある意味、古き良きマカロニ史劇の再来
全能の神ゼウスと人間の女性の間に生まれたヘラクレスが、血の繋がらない父王や出来の悪い兄から疎まれ妬まれ、数々の苦難の末にヒーローとして覚醒する。随所で「グラディエーター」やら「300<スリーハンドレッド>」やらを安易にパクった作品構成は、さすがに失笑されても仕方はなかろう。
まあ、神話ならではのファンタジー的な要素を含めて、ノリとしてはスティーヴ・リーヴス主演の古き良きマカロニ史劇。アメリカではコテンパンに酷評されたようだが、あの手の古いガラクタ映画を見慣れてしまったマニアにしてみれば、低予算とはいえデジタル時代の恩恵でそれなりに見栄えも良い本作など、目くじらを立てるほどのこともない。
男子上半身脱ぎを流行らせたのは「トワイライト」だった
「エルム街の悪夢4」「ダイ・ハード2」のレニー・ハーリン監督が試みたのは、彼流のド派手アクション演出で古典スペクタクル映画を甦らせること。名作「サムソンとデリラ」(49)や「ベン・ハー」(59)のオマージュが登場するのは、その志の宣言に違いない。
さらに、思いっきり投入されたのが筋肉と肉弾戦。敵王役は、実際にテコンドー赤帯、キックボクシング黒帯のスコット・アドキンス。半神半人のヘラクレス役は「トワイライト」出身、今や「エクスペンダブルズ3」組のケラン・ラッツ。筋肉愛好家のために、ヘラクレスが水浴びする姿をお姫さまがこっそり盗み見るサービスシーンも用意されている。