映画 深夜食堂 (2015):映画短評
映画 深夜食堂 (2015)ライター2人の平均評価: 4
ただのほっこり人情ドラマにあらず
路地裏にある深夜営業の小さな大衆食堂を舞台に、控えめなマスターと個性豊かな客たちの暖かい人間模様が綴られていく。テレビ版と地続きではあるものの、基本設定は明快だし物語も独立しているので、予備知識などなくてもすんなりと入っていける。
特筆すべきは、ざっくりとしたオムニバス形式で語られる各エピソードの完成度の高さだろう。どこか懐かしい雰囲気の中にも今の時代がきちんと映し出され、人間の優しさも厳しさも愚かさも面白さもしっかりと描き込まれているのだ。
全編を通して細かなサブプロットも気が利いているし、多部未華子や高岡早紀など賑やかな出演陣もただの顔合わせに終わっていない。是非ともシリーズ化を!
いちげんさんでも全然大丈夫です。
実は路地裏のディテイルもさらに作りこまれたりしているのだけど、映画だからといって風呂敷拡げることもなく、TVシリーズとさほど変わらぬスケールの物語が三つ繋がっただけなのが心地良い。それは基本的に、自分を罰するように生きる男女を「もう自分を赦してやってもいいんじゃないのかい」と、小林薫演じるマスターがちょっとした仕草と気の利いた一品で浄化してあげるようなお話。3.11が被災者に残した傷を骨壺に託して描く(そしてストンとオトす)両端のエピソードもいいが、とりわけ真ん中の話の主人公・多部未華子は助演女優賞級! すべての行為にリアリティがあるし、とろろご飯を待ってるときの表情なんてもう最高だ。