チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密 (2015):映画短評
チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密 (2015)ライター4人の平均評価: 3
シリーズ化希望!……無理だろうなあ。
変身願望が明らかに強いジョニデは、やはり同じ血統のピーター・セラーズに行きつくのか。音楽からして、まんま’60~’70年代のマンシーニ、バカラック系。笑いの質は“一流B級”のブレイク・エドワーズそのまんまだ(P.ベタニーなんてケイトーそのものじゃないか!)。いや、コレは原作のテイストにも割と忠実で、昔サンリオSF文庫でこのシリーズの一篇を読んで嬉しがった僕にすれば完全に想定内。流石に僕にもスベってる感じはあるが(笑)、それが本質なんだから仕方ないし、ヒゲ→ゲロの繰り返しギャグも全然許せるけどね。しかしタイトルデザインくらいちゃんと洒落たモノにしろよ、と監督を小突いてやりたくはなるが。
素直に楽しめちゃったんですけど何か(笑)?
海外では批評的にも興行的にも大惨敗だと聞くが、こちとら素直に楽しめてしまった筆者としては心外としか言いようがない(笑)。
ノリとしては’50~’60年代のオシャレ系スパイ・コメディ&泥棒コメディ。当時だったら監督はブレイク・エドワーズ、主演はピーター・セラーズかダニー・ケイといった感じだろうか。
久々にノリノリなジョニー・デップはチャーミングだし、ご主人様に忠実過ぎなポール・ベタニーもMAX微笑ましい。ギャグのセンスも含めて全体的に時代のピントがズレていると言われりゃそうなのかもしれないが、こういう昔ならではの粋で洒脱な大人のユーモアが通用しないってのもちょっと寂しい。
1960年代のポップ・カルチャーに興味のある方向け!?
最初に連想したのはマーベル原作ではない方の『アベンジャーズ』。1960年代のTVシリーズ『おしゃれ(秘)探偵』のリメイクで、古風でクセのあるギャグが現代に受け入れられず酷評された作品である。
『チャーリー~』のユーモアもまた、いかにも60年代的。ジョニー・デップの振る舞いやセリフを“粋”ととるか、しつこいととるかで評価は変わる。いずれにしても作り手はかなり難しい線を狙っている。
感心したのは音楽。才人マーク・ロンソンのスコア参加は本作の“粋”の部分を確実に支えている。そういう意味では『アベンジャーズ』と同様、“理屈をこねる”のではなく“感じる”映画なのかもしれない。
呆れるほどにスベりっぱなし!
本国アメリカでの大コケ理由は、一目瞭然。ここまで芸達者なキャストを集め、彼らがしっかりキャラの立った役を演じながら、まったく笑えず、呆れるほどスベりっぱなしなのである(強いて言えば、精力絶倫の用心棒を怪演したポール・ベタニ―だけは爪痕を残す)。そもそもサスペンスを得意とするデヴィッド・コープに、ここまでのコメディを演出する才能があったのかという疑問が湧くのだが、職人的脚本家でもある本人が脚本に絡んでない事実も、こんな惨状を生んだようにも思える。ウィットに富み、ブラックな笑い満載の原作テイストを十分に生かせば、『オースティン・パワーズ』ばりのバカ映画になっただけに残念でしょうがない。