ピース オブ ケイク (2015):映画短評
ピース オブ ケイク (2015)ライター3人の平均評価: 3.3
平日の夕方、大人のお客さんが多かったです。
この多部未華子、めっちゃイイなあ~。5年前の『君に届け』(これも◎)と比べると良くわかるけど、真っ当に成長を重ねてるというか。20代の女優がやるべき事をきっちりやっている。
ジョージ朝倉の原作は03~08年発表だが、普通の幸せを求めて空回りする恋愛獣の姿は90年代のガールズコミックで主流だった世界だ。それを田口トモロヲが監督すると、彼が影響を受けたという安部慎一(『美代子阿佐ヶ谷気分』)とつながってしまう。
『白い指の戯れ』のポスター、下北沢の小劇場、峯田和伸の絶唱……。これがシネコンで観れるとは。痛めの恋愛の風景を描きつつ、作家の私的な趣味をメジャーな規模で成立させた“幸福”な映画だ。
サブカル的人間模様には愛を感じます
主体性のないまま生きてきた20代半ばの女性が、このままじゃイカン!と一念発起するものの、またもや問題ありなダメ男とズルズルくっついてしまうというお話。
根は頑固なクセに押しが弱いヒロインの情けなさをサラッと演じる多部未華子、優柔不断だがお人好しで憎めないダメ男の綾野剛と、主演コンビはどちらも魅力的。ビデオレンタル店員の映画オタクぶりや小劇団員の変人ぶりなど、田口トモロヲ監督ならではのサブカル的人間模様にもニンマリさせられる。
ただ、松坂桃李演じるオカマちゃんのキャラや立ち位置を含め、いまひとつ紋切り型の域を出ない設定や展開も多いため、どうしても作為的な匂いが漂ってしまう点が惜しまれる。
豪華キャストは堪能できるが、ヒロイン描写の詰めが甘い
ロフトの店長にしか見えないクドカンなど、恐ろしく豪華なキャストから醸し出されるパッケージ感は、文句の付けようがない。もちろん、前2作でダメ男を描いてきた田口トモロヲ監督作ということで、綾野剛演じる京志郎のダメさ加減は綾野の勢いもあって完璧だ。ただ、本作の主人公は多部未華子演じる志乃。これまで監督が描いてきた女神のようなヒロインとは程遠い存在。だから、観ている方がハラハラしてしまうラブシーンを入れればいいってわけじゃない。そのあたりの微妙な心理描写は、同じ向井康介が脚本協力でクレジットされた『ロマンス』の方が上。明らかに恥ずかしいラストシーンを恥ずかしがって撮ってる感じも、どこか引っかかる。