の・ようなもの のようなもの (2015):映画短評
の・ようなもの のようなもの (2015)ライター3人の平均評価: 4
ユルいユーモアも心地よい下町人情喜劇
森田芳光監督のデビュー作『の・ようなもの』から35年、落語の世界からぷっつりと姿を消した志ん魚の行方探しを軸に、いまひとつパッとしない新米落語家の成長と自分探しを描く。
あえてストーリー性を排除した前作とは対照的な構造ではあるものの、しかし下町のほのぼのとした日常をスケッチする人情喜劇という土台は同じ。ファンなら思わずニンマリしてしまうオープニングをはじめ、原点に対する溢れんばかりのリスペクトに心躍る。
松山ケンイチの芸達者ぶりにも改めて感心。クスッと笑える程度のユ~ルいユーモアの連続も心地良い。見終わった後は無性に天ぷらそばを食いたくなります。
天ぷらそば(大盛)で乾杯!
単体でも楽しめる。だがやはり前作を知っていると面白さが段違い。導入部は「二代目襲名」的なイメージだが、実は志ん魚(伊藤克信)と志ん田(松山ケンイチ)の二焦点になるのがいい。
ある種「天才」にも見える志ん魚と、律儀で真面目な志ん田。これは杉山泰一監督が、森田芳光との資質の違いを自己言及した構図に思える。また伊藤克信の存在感は本当に独特で、それだけで正統の「続編」になる。『の・ようなもの』は彼の個性や身体リズムに負うものが大きいと改めて感じ入った。
他の森田映画オマージュも嬉しいが、全体としては松竹印の似合う喜劇という印象。志ん魚と志ん田が、寅さんと満男の関係性を彷彿させるのは気のせいか?
森田芳光作品のオマージュ大会に感涙!
カップルをイジるオープニングに続き、前作の主人公・志ん魚を探すという“話術の覚醒”的な展開。ファン感涙の35年ぶりの続編にして、松山ケンイチ演じる主人公が『僕達急行』同様の鉄道マニア、北川景子演じるヒロインが『間宮兄弟』を彷彿させるお転婆キャラというように、全編森田芳光監督作のオマージュ大会。前作で異彩を放った志ん肉や志ん菜のほか、仲村トオルが『悲しい色やねん』な関西弁で、鈴木京香が『39』ばりに専門用語をまくし立てるなど、ゲスト登場シーンはファンサービス以上! さらに、尾藤イサオの「シー・ユー・アゲイン雰囲気」で締め、と気配りは徹底しているが、本作だけでも十分、青春映画として楽しめます。