アナベル 死霊館の人形 (2014):映画短評
アナベル 死霊館の人形 (2014)ライター3人の平均評価: 3.3
マニア視点でも楽しめる手堅いオカルト・ホラー
「死霊館」で一際異彩を放っていた人形アナベルの、いわば呪いの原点を描いた前日談的作品。どうやらマニア垂涎のアンティーク・ドールだったらしいアナベル、呪われる前から十分に怖い顔しています(笑)。
それはそうと、マンソン・ファミリーが世間を震撼させた時代を背景に、悪魔崇拝の邪教カルトを絡めたストーリーはソツないものの、怖がらせのツボを心得た演出は十分に手堅い。
「ローズマリーの赤ちゃん」や「エクソシスト」を彷彿とさせる’70年前後風の雰囲気作りも凝っているし、明らかに巨匠バーヴァの「ザ・ショック」を意識したとしか思えない“早変わり”シーンなどホラー映画ファンの琴線に触れる見せ場も少なくない。
オカルト・ホラーとしては充分平均点だけどね。
マンソン・ファミリーを物語に絡め、‘60年代終盤に彼らが起こしたシャロン・テート事件に怯える当時のカリフォルニア住民のムードや、衣裳&インテリアの再現は相当に凝っている。隣家で起こる殺人を目撃してから室内で殺人者に襲われるまでの断続的な移動長回し、アパート内のゴミ捨て場に悪魔が現れてからの漆黒の闇を活用したモンタージュなど、キャメラマン出身監督らしいチャレンジングなシーンはいくつかあり、『ローズマリーの赤ちゃん』への目配せもニヤリとさせるが、結局「それって理屈が通ってないんじゃない?」的展開に終わるのが残念。快作『死霊館』のスピンオフなんだから、あの夫婦が一瞬でも出てきてくれればなあ。
「来るぞ、来るぞ」と思っていても、やっぱりビクッとしてしまう
「ソウ」シリーズ後のジェームズ・ワン監督は「デッド・サイレンス」「インシディアス」「死霊館」と、伝統的ホラーに回帰中。彼が製作し「死霊館」の前日譚を描く本作もその流れ。意表をついて驚かせるショッカー系ホラーだが、隠し味があり、時代を70年代のチャールズ・マンソンのファミリーによる殺人事件直後に設定し、妻がその事件の犠牲者となったロマン・ポランスキー監督の「ローズマリーの赤ちゃん」を連想させる仕掛けがあちこちに。監督は「ソウ」後のワン監督のホラーを撮影してきたジョン・R・レネッティ。画面の右端と左端の両方に目が離せないものを置く構図、ミシンの針近くの手のアップなど、撮影出身らしい演出も。