バッド・マイロ! (2013):映画短評
バッド・マイロ! (2013)ライター4人の平均評価: 3.5
パペットマペット/悪魔の痔核(失笑)。
まさかこのご時世に、こんなチープなバカ映画が堂々公開されるなんて! リスペクトされるのは80年代ビデオ・ブーム期に、数寄者狙いのB級作を量産したエンパイア・ピクチャーズ、中でも特に安っぽい『グーリーズ』系のパペット特撮だ。さしたる意味なくカウンター・カルチャーを意識したり、「痔核のバケモノ」なんてグロ汚いクリーチャー(でも意外とカワいい)を持ち出したりするところなどはZ級の牙城トロマ映画のテイストかも知れんが。ただし映画のつくりは、天然的に仕方なくそうなってしまったクズ映画ではなく、それに愛情を持つファン仕様であるから意外にキチンとしている。嬉々として出演のP.ストーメアも同類なのかね。
80年代ノリのチープでおバカなB級ホラー・コメディ
平凡で冴えない男の積もり積もったストレスがモンスターと化し、肛門から飛び出してはイヤミな上司や使えない同僚を血祭りにあげていく。それとなく社会風刺や心理分析的な要素を匂わせてはいるものの、基本的には80年代ノリのチープなB級ホラー・コメディだ。
それも「グレムリン」というよりは、その亜流たる「グーリーズ」とか「トロル」なんかのおバカ路線。キモカワ系モンスターのマイロには、なんとなく「悪魔の赤ちゃん」の影響も垣間見られたりするのが面白い。
とはいえ、下ネタギャグの多くは不発で、いまひとつバカになりきれなかったという印象。ジャンル的には嫌いじゃないだけに惜しい。
マジメ?フマジメ!? ともかくカルト映画好きは必見
尻の穴からバケモノが出てきて、気づけば尻の穴に戻っている! ありえない、しかし吸引力のある、そんな設定だけで心を鷲づかみにされる型破りなエンタテインメント。
心労からくる腫瘍が怪物と化すアイデアは、言うまでもなくストレスフルな現代社会の風刺。一方で、1950~60年代のモンスター映画にオマージュを捧げた、ハッタリ感満点の映像や音も妙味。真面目と不真面目の境界の面白さを堪能した。
下ネタも多く拒否反応を起こす方もいるだろう。その点に寛容ならば『グレムリン』のようなキモカワなバケモノにも愛着を覚えるはず。『ザ・ブルード/怒りのメタファー』のお笑い版なのでクローネンバーグ・ファンも必見!?
マイロちゃんはこの可愛らしさがヤバい
きっとチープでトホホだろうと思って見にいくと、思った通りにチープでトホホなので、その意味で期待通り。さらに、画面にその姿を現わす前から、その正体が作中の医師によって説明されているという、あけっぴろげさがマイロちゃんの魅力。マイロちゃんのほうも、ヘネンロッターの「バスケットケース」のような哀切は微塵もなく、ましてやクローネンバーグの「ザ・ブルード」や「シーバース」のような名作に近づこうという気もまったくない。だってもう2010年代も半ばだもん、とニッコリするマイロちゃんのルックスは、デフォルメしなくても、そのままで女子中学生のマスコットになれる可愛らしさ。この愛らしさが、現代の病の姿に相応しい。