きっと、星のせいじゃない。 (2014):映画短評
きっと、星のせいじゃない。 (2014)ライター4人の平均評価: 3.5
もっともらしい箴言もちょっと上滑り気味。
難病ものらしからぬユーモアとクールさは、さすが『(500)日のサマー』の脚本家を起用しただけあるが、演出の洗練度はイマイチで、結局「難病もの」であることを超えられなかった恨みはある。でも生の限界を自ら自覚した処女童貞ティーンエイジャーのラヴ・ロマンスとしては充分にポジティヴでスマート。大物S.ウッドリーはもちろん、A.エルゴートも繊細な演技を見せ好感度大だ。重要な展開点となるアムステルダム・ロケが最初いささか観光映画ぽくて弛緩するが、超シニカルなW.デフォーが登場してから一気に緊張度が高まり、最も観光的な場所でもあるアンネ・フランクの家が愛と怒りの拮抗する大きなドラマの場に転じるリズムはいい。
“今を生きる”ティーンのキュートな恋に人生を悟る!
治療不可能な癌を患う16歳の少女ヘイゼルと骨肉腫で片足を切除したバスケ少年ガスの恋物語、と聞いただけではお涙頂戴ものと思うが……、それだけではなかった。達観したヘイゼルと超ポジティブなガスが互いに感化し合いながらその日その日をハッピーに生きようとする姿はまさに「カーペ・ディアム(今を生きる)」。些細なことで落ち込むヒマはないと悟り、思わず机の上に乗って決意表明したくなったほど。ヘイゼルの願いを叶えるべく奔走し、恋人を愛で包むガス役のアンセル・エルゴートがとにかくチャーミングだ。見せ場ゼロだった『キャリー』のときとは打って変わった素敵ぶりは、今後のさらなる活躍を期待させる。
誰もが想定外だった全米大ヒットの理由
終始、酸素ボンベに繋がったチューブを鼻に装着するヒロイン。その姿を見るたび、胸が痛くなるが、脚本は『(500日)のサマー』で頭角を現したコンビだけに、原作人気の力に甘んじることなく、『50/50 フィフティ・フィフティ』にも通じる、決して辛気臭くない難病モノに仕上げている。とにかく『ダイバージェント』の比較にならないほど、シャイリーン・ウッドリーとアンセル・エルゴートが魅力的で、まさに理想のカップル。また、ローラ・ダーン演じる母親や視力を失う親友など、キャラ立ちがしっかりしてるうえ、ウィレム・デフォーが画面をかっさらうアムステルダムのエピソードもあり、観光映画としても楽しませてくれる。
末期ガンの17歳の少女がウツにならずに生きる方法を見つける
難病ものだが暗くない。13歳から闘病している17歳の末期ガンの少女が"自分はもうすぐ死ぬ"という認識と共に生きて、その事実を受け入れるための自分なりの方法を見つける。それを、「ハッシュパピー~バスタブ島の少女」のカメラマン、ベン・リチャードソンが柔らかな光と色で、どこにでもありうる出来事として静かに映し出す。すると、時間の長さが違うだけで、人間の生にはみな限りがあることに気づかされる。
余談だがヒロインの恋人役のアンセル・エルゴートには「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」のエドガー・ライト監督が新作の主演をオファー中。ライト監督の映画にはない清潔感が監督を刺激したのかも?