皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇 (2013):映画短評
皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇 (2013)まさに暗黒のメキシカン・ドリーム
『メキシコ 地獄の抗争』や『ボーダータウン 報道されない殺人者』などで描かれた暗黒を剥き出しで映したドキュメンタリー。これを観た我々の率直な感想は「あっ、本当に現実なんだ」との素朴な驚きではないか。しかも『アクト・オブ・キリング』にも通じる滑稽さを孕んでおり、フィクションの内臓が掻き出されたような衝撃がある。
ナルコ・コリードなど現地のポップ・カルチャーに着目した視座が鋭い。麻薬ギャングが究極の勝ち組としてティーンの憧れを集める世界は、もはや少年マンガ的な「悪の帝国」。この状況を憂うジャーナリストはいても、救うヒーローは出てこない。現実VS想像力の追っかけっこは一気に次元上昇してしまった。
この短評にはネタバレを含んでいます