ラスト・ナイツ (2015):映画短評
ラスト・ナイツ (2015)ライター3人の平均評価: 3
冷たく青い中世騎士物語風の無国籍世界
「GOEMON」「CASSHERN」の紀里谷和明監督が国外で「忠臣蔵」を映画化、前2作とは真逆のテイストで、色調を押さえた写実的世界を構築した。雪の降り積もる北方、中世騎士物語風の無国籍世界が、くすんだ青色を基調に描き出される。美術も衣装も中世ヨーロッパ的でいて、細部に目立ちすぎない形で東洋的デザインが盛り込まれたもの。美術は「英雄コナン」のロバート・E・ハワード原作の「ソロモン・ケーン」や、テリー・プラチェットの「ディスクワールド」シリーズが原作の「アメイジング・ワールド」を手掛けたリッキー・アイアーズ。今回は全編を通して同系の色調と明度なので、次はまた別の世界を見せてほしい。
監督への偏見を捨てて、自分の目で判断してね。
しくじり先生こと紀里谷監督のハリウッド進出作は、忠臣蔵と中世チャンバラゲームをミックスさせたもの。『ゲーム・オブ・スローンズ』人気に乗っかってドラゴンやゾンビ風クリーチャーを出してもよかったのに、忠義=騎士道で押し切った構成に大和魂がにじむ。実力派の役者をちゃんと使いこなしているし、セットや衣装も凝ってるし、黒とグレーを基調にしたビジュアルもクールでいかす。説明調なセリフも多いが、元ネタがわからない非日本人向きなら仕方ない。否定派も多いけど、ハリウッドでここまで撮れるのだから立派でしょう。『47 RONIN』と比べてしまうので評価が甘くなっているかもしれないけど、珍作としてはかなり楽しいよ。
ビジュアリスト紀里谷監督の面目躍如たる世界観
紀里谷和明監督のハリウッド進出第一弾となる本作は、人種も文化も混在する架空の中世封建国家を舞台にした『忠臣蔵』リメイクだ。
『ゲーム・オブ・スローンズ』と比しても遜色ない世界観はなかなか堂々たる風格。細部にまでこだわった美術セットや衣装を含め、ビジュアリスト紀里谷監督の面目躍如たる仕上がりと言えよう。
ただ、内容は『忠臣蔵』の焼き直し以上でも以下でもなく。権力の理不尽に対する反逆という原典の持つ普遍性を抽出し、武士道精神という日本独特の文化を万国共通の言語に置き換えた結果、よくある剣戟ドラマになってしまった感は否めない。監督の野心と熱意は伝わる作品だけに、脚本の凡庸さが惜しまれる。