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ルック・オブ・サイレンス (2014):映画短評

ルック・オブ・サイレンス (2014)

2015年7月4日公開 103分

ルック・オブ・サイレンス
(C) Final Cut for Real Aps, Anonymous, Piraya Film AS, and Making Movies Oy 2014

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

ミルクマン斉藤

「映像」が持つ前向きな力を実感せよ!

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

かつて行った虐殺行為を嬉々として自ら再現する男たちを真正面から捉え、人間という存在のダークサイドを白日に晒した『アクト・オブ・キリング』の姉妹編。ただしこちらは被害者側の家族から描いたものだというので“それって当たり前の視座やん”という予想を軽く裏切る、さらなる酷薄さが凄絶。だって主人公は前作のプロットの発案者だから、そのガチ感は尋常じゃないのだ。しかし本作の本質は、虐殺加担者にその事実関係を問うた後に訪れる沈黙の時間。そこにインタヴューイの真実の心象が現れるのを冷徹に、しかし糾弾一辺倒ではなく記録しているのが、特異なサディスト集団の物語ではないことを言外に伝えて凄まじい。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

「許し」って言うは易し、実践は……。

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

インドネシア大虐殺の真相はいまだに闇の中で、国民の大半は歪んだ歴史観を信じている状況を白日の下にさらすのが本作だ。兄を虐殺された検眼士アディが『アクト・オブ・キリング』で殺人自慢した老人たちと淡々と対峙する姿を追うが、被害者を前にした加害者たちの態度が千差万別。悪事と認識していたのが態度に現れる人もいれば、正義と言い張る人あり。監督とアディが暴くのは、国家が推進した殺人に盲目的に加担する人間心理だ。怖い。でももっと怖いのが双方が何もなかったかのように共存しなきゃいけない事情。加害者に「許し」を与える展開は理想的かもしれないが、「怨恨」を抱えて生きるアディと両親を思うと現実は甘くないと実感する。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

犠牲者が虐げられ続ける大量虐殺の不条理

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 100万人以上が犠牲となったインドネシアの大量虐殺の真実に迫った『アクト・オブ・キリング』の続編的な本作は、犠牲者の遺族の目から事件を振り返る。
 加害者の多くが今も英雄視されているため、愛する家族を殺された遺族は恨み言を口にすることすらできない。亡き兄の末路を探る男性アディの行為自体、実は危険極まりない挑戦だ。
 首を切る、ペニスを切る、腹をかっ捌く。当事者が自慢げに語る殺害方法のなんと酷いことか。息子を殺されたアディの父はストレスで歯が抜け落ち、母は髪が真っ白になった。彼らが息子恋しさに涙しながら貧しい苦渋の人生を歩む一方、加害者たちは恵まれた生活を送る。その不条理に呆然とする。

この短評にはネタバレを含んでいます
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