涙するまで、生きる (2014):映画短評
涙するまで、生きる (2014)ライター2人の平均評価: 4
ヴィゴを荒れ野に放ったこの監督、才能あり!
V・モーテンセンは荒れ野に放て! これは勝手に唱えている映画的真実であるが、彼の「荒れ野映画」に忘れ難い新たなる一本が加わった。原作者カミュの分身のごとき役柄を得て、モーテンセンは荒涼という言葉などとうに超えた、不条理感をむき出しにした大地をさまよう。
彼に同伴するのは、殺人容疑でほとんど運命が詰んでいるアラブ人(R・カテブ、名演)、そしてN・ケイブとW・エリスが作ったささくれだった音楽(これもイイ)。アルジェリア戦争のとば口で確固たる正義が判然としなくなってゆく中、仏軍のある行為を執拗に糾す。その“真っ直ぐさ”に胸が熱くなる。モーテンセンは、心の荒れ野でもがく役柄が実に“画”になる。
声に出さなければ、行動で示さねば何も変わらない
独立気運が高まる‘50年代半ばのアルジェリア、荒涼とした大地にポツリと立つ学校。そこで教える孤独な中年教師が、アラブ人容疑者を山の向こうの町まで連行することになる。
動乱渦巻く危険な旅路の過程で、やがて明かされていくアラブ人が逮捕された理由、教師が俗世を捨てるに至った過去。その背景にはイデオロギーの対立や民族間の憎悪、宗教と因習の掟など、現代にも通じる紛争の構図が浮かび上がる。
社会の理不尽から目を逸らしてきた寡黙な2人が、心を通わせることで生まれる心境の変化。たとえ無力だと感じても、声に出さなければ、行動で示さねば何も変わらない。朴訥とした静けさの中に強さを秘めた寓話的な作品だ。