共犯 (2014):映画短評
共犯 (2014)ライター3人の平均評価: 4
ウォン・カーウァイも認めた“美しくも残酷な青春”
恐ろしいほど万人向けだった前作『光にふれる』同様、台湾映画が得意とする瑞々しい青春映画の要素に、チャン・ロンジー監督が本当に撮りたかったデイヴィッド・フィンチャー的サスペンス要素をプラス。それにより、『告白』『渇き。』はもちろん、『ソロモンの偽証』にも匹敵する“美しく残酷な青春映画”に仕上がった。本作でもウォン・カーウァイが認めた息を呑むほどの映像美は健在だが、さらに注目すべきは事件の発端である雨や新たな悲劇が起こる湖など、水を使った演出であり、とにかくロケーションが素晴らしい。初見でのインパクトは薄いかもしれないが、2回目を見ることで、監督の計算された繊細な演出がより見えてくるはずだ。
コミュニケーションの不在が招く青春の孤独と哀しみ
ある日偶然、少女の死体を発見した3人の男子高校生。彼女の死の真相を探る少年たちの奇妙な友情と予期せぬ悲劇を通じ、現代の若者が抱える孤独や哀しみを描く。
根幹にあるのはコミュニケーションの不在だ。忙しい親は子供とまともに向き合う余裕もなく、杓子定規な教師は学生の問題にも無関心。同じ教室で学ぶ生徒たちも互いを深くは知らず。イジメや差別は野放しにされ、SNSを介して根拠のない噂ばかりが拡散し、傷ついた少年少女の声なき声は誰にも届かない。
台湾産青春映画らしい詩情豊かな瑞々しさに、ミステリアスな暗いタッチが加味され、痛々しくも繊細な思春期の苦悩が浮かび上がる。きっと日本の若者も共感できるだろう。
ストーリーテリングの冴えと内容の濃い脚本に感動
投身自殺した美少女の遺体を発見した男子高校生3人が探る自殺の真相と捜査でり起こされる高校生活の闇をPOVを変えながら語る手法が斬新だ。『光にふれる』も素晴らしかったチャン・ロンジー監督が本作ではスタイルを変え、ケレン味たっぷりなストーリーテリングを披露する。しかも単なる謎解きに終わらせず、いじめや孤独、SNSの恐怖、承認要求といった今どきのティーンが直面する社会問題にも言及した脚本がまた素晴らしい。出演者の大半は無名で演技初体験の役者もいるようだが、全員がしっかりキャラクターにハマっている。特に超面倒くさい自殺少女を演じたヤオ・アンニンのアンニュイな雰囲気が印象に残った。