俺物語!! (2015):映画短評
俺物語!! (2015)ライター4人の平均評価: 4
猛男に寅さんを重ねる河合監督のユニークさ。
本当は最初から結ばれてるのに単なる思い違いで実らない…というワンアイデアのラブコメだが実に巧みに練られている。主人公のあまりの勘の悪さゆえ引き起こされる誤解のうちに、もともと三角関係でさえないところが次第にそんな様相さえ示しはじめるのも、そもそも善意が行動規範にあるだけに爽やかかつ切ない。ま、こういう展開は「誰か早く言ってやれよ」と思わせた時点で一気に醒めてしまうもので、この場合猛男に早く言ってやるべきは砂川だが、そこに彼の岡惚れ的感情が加わることで二枚目にも同情の余地ができ、三者三様のキュンキュンが生まれるわけ。なんといっても凜子役・永野芽郁のピュアすぎるほんわか笑顔に絶対的な説得力あり!
80`s邦画テイストも感じさせる鈴木亮平の役者魂
さすがは、元みみずくの竜、いや『変態仮面』! 本作で猛男を演じる鈴木亮平は『名門!多古西応援団』の我王銀次、『押忍!!空手部』の松田勝といった、男も惚れる顔面凶器な役者魂を継承し、身体を張って“人気コミックのキャラを演じるとは、なんぼのもんじゃい!”ということを、改めて教えてくれる。そのため、「鈴木先生」の河合勇人監督が得意な脳内シーンを含む、猛男の勘違い大会のみで引っ張る展開も成立し、多少ムチャなギャグも笑わせてくれるなど、どこか80`sの邦画テイストを感じさせる。一方、坂口健太郎もルックスは似てないものの、砂川の微妙なラインを再現。早く猛男がモテモテになっていく「続編」が観たいものである。
痛快!やっぱり映画は現実にはないものが楽しい
痛快! フィクションはこうあるべき。すべての登場人物が善人ですべての心情が善意という、現実にはない世界を描きつつ、その楽しさと愉快さに観客を没頭させて、それが現実にあるかどうかには気づかせない。原作はコミック、アニメ化もされているが、この実写化は、コミックやアニメの軽やかさとよい意味での現実離れ度が健在。監督はこちらもコミック原作の「鈴木先生」の河合勇人。コミック的な特殊な映像演出は控えめに、実写ならではの夕方になりかけの空などの自然の風景を取り入れ、異色の主人公は30Kg増の鈴木亮平の大仰な演技で実現、コミックの"大文字"はアングルで表現して、絶妙なバランスでコミック世界を実写化している。
愛すべきもどかしさが宿る青春コメディの快作
少女コミックの映画化と聞き、男目線で映画を見てしまいがちな自分としてはあまり期待していなかったが、これが意外に面白い。
一本気の主人公をギャグ機能させつつ、男の純情を活写。これだけでは漫画に過ぎないが、冷めた目線を持つその親友は時機を得たキャラで、主人公とのバランスがとれた。そんなふたりが、ルックスも性格もよい純なヒロインに惹かれるという絶妙の設定で、見ているこちらも引き寄せられる。これはキャラクター配置の勝利。
主人公の進展しない恋愛模様はもどかしくもある。しかし、このもどかしさは愛すべきもの。中学の頃に見た『翔んだカップル』を思い出し、恥ずかしながら、ちょっとときめいてしまった。