ドローン・オブ・ウォー (2014):映画短評
ドローン・オブ・ウォー (2014)ライター4人の平均評価: 3.8
どれだけテクノロジーが進化しようと戦争の本質は変わらない
米国本土にいながら軍事用ドローンを操作し、遠く離れた紛争地域のテロリストを黙々と抹殺する空軍パイロットが、モニターの向こう側の凄惨な非日常と普段の穏やかな日常との狭間で徐々に壊れていく。
無駄な犠牲を払わず敵を確実に仕留められるという効率性がドローンの建前だが、しかし現場へ攻撃指示を出すお偉方にとって、避けるべき犠牲の中に一般市民の尊い命は含まれていない。実戦復帰を強く望む主人公だが、それは自ら一切のリスクを負うことなくゲーム感覚で人命を奪うことへの罪悪感の表れだ。
いずれは戦地へ派兵せずに済む時代が来るかもしれない。しかし、それでも戦争の本質にはなんら変わりがないことを本作は示唆する。
遠隔操作はダメで空爆はOK? どっちもダメです!
世界同時多発テロ後、「テロリストをぶっ殺せ!」な気運が高まったアメリカだが、ドローン攻撃に関しては批判が多い。一般人が巻き添えになるし、非人間的だかららしい。ドローン爆撃任務の空しさを酒で慰め、精神的に追いつめられた主人公を軸に戦争の現実と兵士の苦悩を描き出す監督も批判派だろう。しかしドローン攻撃に罪悪感を感じる主人公は戦闘機パイロットに戻りたがっていて、つまりは人間vs人間な戦争はOK。戦争の手法論の是非を問うのは無意味だが、戦時下ではこれが精一杯か。攻撃成功後に「グッド・キル!」と、「いい試合でした」的な声掛けに皮肉なニュアンスを込めたのが監督のせめてもの抵抗?
テクノロジーが変えた冷酷な現代の戦争に対応不能な人間性の限界
地対空砲の飛び交う映像が茶の間に流された湾岸戦争は「ゲーム感覚」と呼ばれたが、軍事用ドローンの導入でさらに様相が異様になった現代の戦争をまざまざと見せつけられる。対テロ戦争の現実は、正義感も大義名分も抱きがたい「ゲーム」そのものだ。空軍基地のコンテナでモニターを見つめ、遙か異国の敵をクリックひとつでミサイルにより一掃し、帰宅後は家族と食事。返り血も硝煙も無縁の静かで正確な殺戮と日常の往き来に、兵士の精神は壊れていく。テクノロジーに侵蝕される人間性を描いてきたアンドリュー・ニコルの張り詰めた演出がいい。戦争のリアルを知る元戦闘機乗りが、人として取った最後の行動を思わず支持し、ハッと我に返った。
『ガタカ』好きにはたまらんドライで無機質な空気感
『TIME』『ザ・ホスト』のYA路線が続き、どうなるかと思ったアンドリュー・ニコル監督が復活! 1万キロも離れた異国に、ゲームのようにミサイルを撃ち込み、標的だけでなく、民間人も巻き添えにしながら、その晩には良き父親に戻るドローン操縦士の日常という設定が、とにかく面白い。そして、戦地に赴かずしてPTSDに苦しめられる姿は『アメリカン・スナイパー』と似て非なるもので、死んだ目をしたイーサン・ホークもいい(彼の相棒は、イモータンジョーの妻だったゾーイ・クラヴィッツ)。恐ろしいほど淡々としたリズムや呆気ないラストなど、好き嫌いが分かれるが、このドライで無機質な空気感、『ガタカ』好きにはたまらない!