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スポットライト 世紀のスクープ (2015):映画短評

スポットライト 世紀のスクープ (2015)

2016年4月15日公開 128分

スポットライト 世紀のスクープ
Photo by Kerry Hayes (C) 2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

相馬 学

ストイックであるがゆえの滋味に酔う

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 マイケル・キートンの新聞記者役といえば『ザ・ペーパー』を連想するが、スピード感あふれる同作と比べると、こちらは圧倒的にリアリティ重視。視点は冷徹で、動物観察映像を想起させる。

 本作での“動物”は、もちろん記者たち。プロ意識の強い彼らの熱意は低温であぶり出されるかのよう。ドラマが進むほど世の不条理に対する怒りが煽られ、彼らに気持ちがシンクロする。技あり。

 抑制の中にも記者たちの感情が表われ、そこがまた妙味。アンサンブルキャストの中でも怒りをむき出すマーク・ラファロ、“教会に通えなくなった”とやるせなさを吐露するレイチェル・マクアダムスが、オスカー候補となったのは妙に納得。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

オスカー作ながら、『ザ・ペーパー』超えとは言えず。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

間違いなく当たり役のリーヴ・シュレイバーら、記者チームを演じるキャストの演技は見事であり、いわゆる“お仕事映画”としてはよく出来ている。ただ、マイケル・キートンの記者ものといえば、『ザ・ペーパー』があるだけに、どうしても職人ロン・ハワードとは異なる、トム・マッカーシー監督の演出に首を傾けてしまう。リアリティ重視で、あえてドライな演出を選択したことは決して悪いわけではないが、それによりカトリック教会があまり身近でない世界で生きる人間には、ことの重大さが伝わりにくい結果に。また、その後の教会の反応やボストンの街の状況が描かれないことで、最後にガッツリとカタルシスを感じられないのもモノ足りない。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

調査報道の真髄を教えてくれる傑作

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

法王ベネディクト16世が生前退位を選んだ理由のひとつとされる神父による性的虐待事件。長らくタブー視されていた汚点を暴いた「ボストン・グローブ」紙の記者チームの粘り強い取材過程を丹念に追う正攻法の演出が心地いい。教会や法曹界をも巻き込んだ隠蔽の実態をジャーナリスト生命をかけて暴いた事実そのものがドラマティックなのだから、ゴテゴテと飾り付ける必要無しと判断した製作陣の英断に拍手! マーク・ラファロやマイケル・キートンら演技派がずらりと顔を揃えたキャスティングも渋く、通好み。夢のアンサンブルが実現している傑作なのだ。見れば、この映画がレオ祭のなかでアカデミー賞作品賞を受賞した理由がわかるはず。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

日々の地道な積み重ねがやがて大きなものを動かす

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 チームのひとりひとりが、日々、足で歩いて手を動かして、小さな仕事を積み重ねていく。そうした日々が続いていく。すると、その堆積が、ついに大きなものを動かす力を発揮する時が到来する。ドラマは大きな起伏なく淡々と進むが、それは仕事というものが、そのように行われるものだからだ。
 そういう物語なので、中心人物は1人ではなく、事態に関わる人間のすべてが主人公な群像劇になっている。彼らが糾弾する対象も、個人ではなくシステムだ。
 キャスティングも物語に相応しく、あえて派手なスターは登場せず、マーク・ラファロ、マイケル・キートンら、確かな演技力を持つ実力派俳優たちが顔を揃えている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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