神様メール (2015):映画短評
神様メール (2015)ライター4人の平均評価: 4.3
抱腹絶倒&感動のシュールな傑作ファンタジー
実は全知全能の神様はベルギーのアパートに住んでいて、パソコンをいじくっては人々の運命を勝手に弄び、妻や子供に暴力を振るう引きこもりのDVオヤジだった!という設定のもと、そんな父親に反旗を翻した幼い娘エアがささやかな“奇跡”を起こしていく。
自由奔放な想像力と抜群のユーモアセンスで描かれる、シュールでチャーミングなおとぎ話。風刺の効いたブラックな視覚的ギャグを軽快なテンポで連打しつつ、初めて外の世界へ出た少女エアの冒険の旅を通じ、人間の可笑しさと哀しさ、愚かさと素晴らしさを温かな目で見つめる。
まさに抱腹絶倒と感動の嵐。大女優カトリーヌ・ドヌーヴを含む役者陣のアンサンブル演技も実に楽しい。
とにかくファンキーで楽しく、バチカンも許してくれるはず。
神様がエゴマニアックなクソ野郎で、そんな父に絶望した娘エアが人間に余命宣告メールを送ったことから起こる奇跡の数々がとにかくファンキーで楽しい! 奇想天外な設定なのに一つ一つのエピソードに共感&納得でき、さらには「隣人を愛せよ」という教えもうさん臭く思えなくなった。エアちゃん、最高! 特に素晴らしいのが神様の妻の描き方。聖書でキリストが母親を“女”呼ばわりすることに長年憤っていたが、この映画を見て「どんなもんだい」って溜飲が下がりました。宗教を笑う!? といっても小バカにするのではなく、心の拠り所としての信仰の重要性に気づかせてくれるわけで、法王様もきっと許してくれるはず。
イエスの10歳の妹がキュートな奇跡を振り撒く
もしもイエスに10歳の妹がいて、新しい聖書を書こうと人間世界にやってきたとしたらーーという設定で、彼女が出会う新たな使徒たちの、どこかオフビートで哀しく愛おしい物語が、絵本のように綴られていき、ずっと眺めていたい素敵なページがいくつも見つかる。ファンタジー仕様で、色調は甘く、触感は柔らかいが、描かれているものはスイートなだけではない、というのはこの監督の「トト・ザ・ヒーロー」の系譜。
この頃の神さまと言えば、新旧多種多様な神が人間と同じ場所で暮らす現代アメリカを描く、ニール・ゲイマンの小説「アメリカン・ゴッズ」のTVミニシリーズ化作が来年米放送。その神々と比較するのも楽しそうだ。
『ミスター・ノーバディ』から5年、相変わらず狂ってます。
『インセプション』よりブッ飛んでた『ミスター・ノーバディ』のジャコ・ヴァン・ドルマル監督最新作だけにキャッチーな邦題やキュートなヴィジュアルから察する、ほのぼのコメディを期待すると、あまりに壮大で深いテーマに圧倒される。とはいえ、前作ほど暴走してないので、ご安心あれ。『ありふれた事件』のブノワ・ポールヴールドがダメ神様という、絶妙なキャスティングもさることながら、『マックス、モン・アムール』のシャーロット・ランプリングと化すカトリーヌ・ドヌーヴらを相手に、もの怖じしない娘役のピリ・グロインがスゴい。「マーフィーの法則」的あるあるも悪くないが、『人生スイッチ』にも通じるブラックな笑いもいい。