ミスター・ダイナマイト:ファンクの帝王ジェームス・ブラウン (2014):映画短評
ミスター・ダイナマイト:ファンクの帝王ジェームス・ブラウン (2014)ライター3人の平均評価: 4.7
音楽ドキュメンタリーの枠に収まらない傑作
ファンクの帝王ジェームズ・ブラウンの成功を紐解くドキュメンタリー。最高にノリノリなパフォーマンス映像を散りばめつつ、ある種の怪物でもあったJ・Bのなんとも人間臭い素顔をじっくりと掘り下げていく。
関係者の証言で浮かび上がるのは、必ずしも好人物とは呼べないJ・Bの実像。しかし、それでも彼らの言葉の節々に深い尊敬と愛情の念がこもっているのは、人種差別や貧困という逆境を打破するために暴君とならざるを得なかったことを理解しているからだろう。
さらに、公民権運動の闘士としての一面を紹介しながら、強すぎる信念ゆえに内包していた矛盾や葛藤にも光を当てる。音楽と時代の関わりを考察する上でも必見。
歴史を踏まえつつ、そこに留まらない
ジェームズ・ブラウンがどのようなことを行ったのか、そしてその時、アメリカ社会はどんな状況だったのか。彼と社会、その2つがそれぞれに変貌していく様子を描いていく。が、そうした観点から描かれながら、最終的に浮かび上がってくるジェームズ・ブラウン論は、決して社会派ドキュメンタリーの枠に収まるものではない。そこが魅力。
映画は、ジェームズ・ブラウンという、大きな魅力もあり、欠点もあるひとりの人間を描きつつ、そんな彼が生み出した音楽が、彼個人を超え、さらに時代を超えて、世界中で鳴り続けていくさまを映し出す。その音楽の力を実証するべく、彼の音楽が映画の最初から最後までずっと鳴り続けている。
まさにほんまもんの“ソウルの革命”!!
こりゃ凄いわ…。『ジェームス・ブラウン~最高の魂を持つ男~』で再現された“ザ・タミー・ショー”の本物映像が出てくるミック・ジャガーPの大仕事。悶絶の激レア素材満載で、音楽・人物・商売・政治など多角的かつ明晰な構成で迫る。何より秀逸なのは絶頂期の70年代前半までに限定し、本当に濃厚なJB汁だけを絞ってみせた事。
ファンクの誕生に関してもパーカー兄弟やブーツィー・コリンズなどバックの貢献と、チャックDやクエストラブが語るヒップホップへの影響で挟み撃ち。また公民権運動への参加や民主党ハンフリーの応援演説から、ニクソン支持に流れる辺り、「政治と音楽」を考えるうえでも絶好のテキストと言えそう。必見!!