ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (2016):映画短評
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (2016)ライター6人の平均評価: 4.3
ただのスピンオフに止まらない秀逸な戦争映画
SW世代&ハマーホラー・ファンとしては、たとえCGと分かっていてもターキン総督=ピーター・カッシングの復活には思わず目頭が熱くなったし、あのエピソード4へと繋がるクライマックスにも鳥肌が立つほど感動したが、しかしそれ以前に本作は単体の戦争映画としても手堅い出来栄えだ。
必ずしも常に帝国軍=悪、反乱軍=善とは限らず。戦争というものの非人間性を強く浮き彫りにしつつ、それでもなお大義名分ではなく正義のために死を覚悟して戦いへ臨む人々の気高さを描く。悲壮感すら漂う凄まじいバトルシーンは圧巻。ただのファンサービス的なスピンオフには止まらない。
スピンオフの概念を変えてしまった快作
娯楽と社会風刺の融合、シリーズへの畏敬を踏まえつつの進化した『シン・ゴジラ』同様の興奮をこんなにも早く味わえるとは。
帝国軍VS.反乱軍を単純化して描くのではなく、命令で動かされていた人たちが自らの意思で立ち上がる展開にシビれる。
主要キャストは、各地域の映画界を盛り上げてきた人たち。彼らを檜舞台に上げ、見せ場もきちんと用意した配慮がニクい。そんなところも”シンゴジ”とシンクロ。
単体でも成立しているが、デス・スターの破壊力と彼らの死闘を目撃してから改めてエピソード4を再見すると、一層物語の深味が増す。
何より今後、安易にスピンオフを作ろうとするシリーズにプレッシャーを与えた事は間違いない。
普通の人々が個人として行動する新たな「スター・ウォーズ」
ギャレス・エドワーズ監督の発言通り、まさに"普通の人々"の物語。"ローグ・ワン"を名乗るとき、彼らは反乱軍の一員としてではなく、個人として行動するのだ。そのそれぞれの個性、思いと行動理由もしっかり描かれて「スター・ウォーズ」史上もっとも人間の普遍的な感情に訴えかける物語が展開する。「エピソード4」直前なのでおなじみのメカや人物たちが続々なのも楽しく、同じメカでも戦闘空間全体のスケールと速度が「エピソード4」とは違う、現在のサイズ感とスピード感なのに興奮。ベイダー卿の登場のさせ方や宇宙空間でのある攻撃法など、随所に"監督がやりたかったこと"を感じさせるのも「スター・ウォーズ」続編として新しい。
SWユニバースに出現した戦争映画!
つなぎの物語が必要?と懐疑的な気持ちで見たけれど、ギャレス・エドワーズ監督に拍手。シリーズを敬愛しつつも彼の視点による戦争映画に仕上げ、さらにエピソード4『新たなる希望』にもしっかりとつなげている。特筆すべきは戦闘シーンの泥臭さ。空中戦やクローン戦は「戦争=生命が奪われる」観念が不足していたが、本作は生命だけでなく子供の人生や夢を奪ってしまう戦争の悲惨さをきっちり描く。また大義の前で小悪は許されるのかという難問や少年兵の苦悩も提示され、戦闘シーンかっけ〜なんて言ってられなくなる。そしてやっぱりドニー・イェンと姜文の起用も大正解! 中国マネー目当てなのはわかるけど、華があるのだ。
『帝国の逆襲』さえ凌ぐ!戦争活劇×父と子の物語×希望の神話
第1作が1977年に出現したときの衝撃と感動が甦る。フォースやジェダイを取り去り、“飛車角落ち”で勝負に挑む王者の風格。新キャラ中心でSW的なるものを追究し尽くす。黒を基調とした新ドロイドや新トルーパーの適確なデザイン性。復活を遂げるキャラたちの配置。SW愛に満ちながらも、ギャレスはJ.J.のように「踏襲」することに腐心せず、「破壊と創造」というリスクある冒険に挑み、ものの見事に成功している。善と悪に明快に色分けされた物語ではない。限りなくグレーで中庸に漂う人々が、命を燃焼させ世界の救済に資する希望の神話。フォースを“信じる”盲目の戦士ドニー・イェンの殺陣は、SW史上最高の勇姿と断言しよう。
カタストロフィから導かれる“新たなる希望”
『エピ4』オープニングロールに流れる「反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功」し、“新たなる希望”が生まれる物語。主要キャラが『エピ4』以降に登場しないことでも分かるように、「どうカタストロフィを描くか」がポイントのため、破壊神=『GODZILLA』のギャレス・エドワーズ監督抜擢には納得。クライマックスの壮絶バトルは、アンチカタルシスな戦争映画を狙ってるが、『映画ドラえもん』のゲストキャラ的幕引きを魅せるKー2SOやBL臭漂うベイズ&チアルートらの姿は涙腺を直撃。また、パズルの最後のピースがハマったようなラストシーンの爽快感はハンパなく、中盤のタルい展開もチャラにする!