グッバイ、サマー (2015):映画短評
グッバイ、サマー (2015)ライター3人の平均評価: 4.7
普通であることに疑問を抱いた少年たちのひと夏の大冒険
平凡で普通な日常に疑問と閉塞感を抱いている思春期の親友コンビが、夏休みを利用して2人っきりの冒険の旅に出る。ミシェル・ゴンドリー監督の少年時代をモデルにした瑞々しい青春映画だ。
移動手段は手作りの“動くログハウス”。免許証がないから車だとまずいけど、これだったら警察の目もごまかせるし、寝泊りも出来るから一石二鳥じゃん!っていう発想が子供らしくてバカ受け。一事が万事この調子で、早く大人になりたくて背伸びしてみせる少年たちの、愛すべき浅知恵がなんとも微笑ましい。
女の子みたいな美少年ダニエルと天然パーマのヤンチャ坊主テオという主人公たちも魅力的。’70年代っぽいレトロ感にもキュンとする。
クリエイター、M・ゴンドリーの原点に刺激されっぱなし
14歳の少年コンビの冒険潭というだけで心躍るのに、主人公二人の豊かな創造性とみずみずしい感性に刺激されっぱなし。M・ゴンドリーの原点らしい、動くログハウスが最高にいかしてる! 子供らしいドジをしでかしたり、謎な風俗店にうっかり足を踏み入れたり、些細なことで仲違いしたりといった道中の波瀾万丈の盛り込み方も加減よく、奇想天外性を抑制したゴンドリーの監督としての深化を感じた。良い意味で普通の映画だからこそストーリーテリングの才が伝わる。ほぼ二人芝居なので少年たちの会話が重要だが、妙に哲学っぽい会話に違和感がないのは幼いとはいえフランス人だからか。ダニエル君の月代姿は思い出すだけでも笑えます。
なまいきダニエル&テオのひと夏の冒険
これはたまらん!! 青い自意識を剥き出しにした14歳男子を愛おしく描く、美しき中二病映画として『シング・ストリート』と今年双璧の名作。ミシェル・ゴンドリーの自伝的内容らしいが、「落ちこぼれた文化系+アウトサイダーの転校生」というヘッセ的なW少年の図式が据えられ、『車輪の下』に胸締めつけられた頃が甦る。パンクスの兄貴を無理矢理讃えた作文などユーモアも抜群!
ロードムービー仕立ても最高。柔らかな自然光溢れるフランスの風景と、『恋愛睡眠のすすめ』等でも発揮された手作りガジェットの魅力の融合。独特な個性と共に、仏映画伝統の味(ヌーヴェルヴァーグ含む)も満々な『ゴンドリーの思春期』。絶対観て欲しい!