東京喰種 トーキョーグール (2017):映画短評
東京喰種 トーキョーグール (2017)ライター4人の平均評価: 3.3
成長物語として完結させた端正さに好感
原作の愛読者としては不安もあったが、ためらいなく合格点を献上したい。勝因は、映画化するエピソード数を欲張らなかったことにある。
原作3巻分ほどの映画化で、観賞前はその後に登場する強烈なキャラが登場しないのが残念に思った。が、おかげで、人間ではなくなった主人公が人間を喰らう、そんな運命を受け入れるまでのドラマとして着地。この手の作品にありがちな、続編への必要以上の目配せを抑え、一本の完結した映画になりえた。
亜門のパートが小さくなったり、苛烈な描写が抑えられたりなどの不満はなくもないが、これはこれで手堅く、好感が持てる。派手な地獄絵図は、原作どおりならトンでもないことになる続編に期待。
闇に生きる人喰い種族にマイノリティの葛藤を映し出す
人肉を食わねば生きていけない人型の捕食種グールが暗躍する東京で、ある事件から半グールとなってしまった若者が、捕食種抹殺の使命をおびた捜査官たちと死闘を繰り広げつつ、人間とグールの共存を模索して苦悩する。
原作コミックは未読だが、なるほど、闇の種族グールにマイノリティの葛藤を投影させた物語設定は、シャーレイン・ハリスのサザン・ヴァンパイア・シリーズを彷彿とさせて面白い。窪田正孝や清水富美加も好演だ。
ただ、これは長編コミック映画化の宿命みたいなものかもしれないが、やはり全体的にダイジェスト版的な食い足りなさが残ることは否めない。CGの仕上がりも玉石混合。いろいろと惜しい。
どこか懐かしさを感じさせる実写化
ドラマ版「デスノート」超えといえる、汗かきべそかく窪田正孝が放つエネルギーが作品全体を引っ張っているのは事実。原作ファンを納得させるための、“あのエピソード並べてみました”感は悪くないが、何かというと“喰種は人間の食べ物を食べれない”設定(→嘔吐シーン)ばかりが強調され、シーンの流れや繋がりに影響を及ぼす。そのため、本来高まるはずのカネキと亜門の『ロッキー4』な訓練比較シーンも、いささか強引に見えるほど。ドン・デイヴィスの劇伴も世界観に合っておらず、『寄生獣』に及ばずといったところだが、そういったアンバランスさが結果、ふた昔前のマンガ実写化のような雰囲気を醸し出しているのは、なかなか興味深い。
アクション中の静止姿勢がクールにキマる!
主人公がマスクを被って人間ではないものになってからの、俳優の身体とCGが一体化して創り出す動き、その異形化した身体全体で創り出す図形が、美しい。特に敵と闘う激しい動きの中で、一瞬、動きが止まる時の姿。身体の傾き、腕と脚の形と位置、それらの創り出す図形が、1枚の画のようにクールに決まる。その図形の鋭角的なデザインは、おそらく原作コミックの画と同じ美学を目指したものだろう。その図形を生み出すために、主演俳優のよく動く身体と、無駄肉のない手足の長い痩身が貢献している。もう一つ見事なのは、主人公が被る黒い髑髏に似たマスク。そのデザインが原作そっくりで、この世界の美学を象徴している。