神聖なる一族24人の娘たち (2012):映画短評
神聖なる一族24人の娘たち (2012)ライター2人の平均評価: 3
パゾリーニを彷彿とさせるウラル民族版「デカメロン」
ロシアの少数民族マリにスポットを当てた本作は、マリ人の女性たちの大らかで逞しい“生”と“性”にまつわる艶話を集めた、さながらウラル民族版「デカメロン」といった様相を呈している。
男の幽霊にかどわかされ全裸で踊り狂う若い娘たち、華奢な痩せた姪っ子を自分のような豊満バディにしようとまじないをかけるおばさん、夫に横恋慕する醜い森の精霊に呪いをかけられた若妻。その滑稽で風変わりな逸話の数々から、キリスト教文化圏とは異なる土着的なマリの伝統文化を伺い知ることができる。
パゾリーニ作品を彷彿とさせる生々しさは好き嫌いが分かれるかもしれないが、民俗学的にとても興味深い作品であることは間違いない。
白い光、鮮やかな色の娘たち
光は白い。その白く冷たい光の中で、娘たちの髪や衣装の赤や青が、明るく鮮やかに目に映る。その色彩だけで、そこが異世界であることが分かる。この北の土地では、人々は自然と一体化して暮らしていて、娘たち24人が紡ぐそれぞれの物語は、みな味わいは異なるが、どれもが民話のように古来からそこにあるものと、今ここの日々の暮らしを分ける境界線が失われている。ここでは生と性は同じものなので、彼女たちの物語はみなどこかで性とつながっているが、ここでの性は自意識や恋愛とはほとんど関係がなく、陽光の中にあるおおらかで清浄なものだ。映画終了後も、白い光、広がる大地、そこを吹き渡る風、そして娘たちの鮮やかな色彩が残る。