シークレット・オブ・モンスター (2015):映画短評
シークレット・オブ・モンスター (2015)ライター2人の平均評価: 4
偏愛対象! 異様な美意識のポリティカル・ホラー
ジャンルでいえば政治寓話だが、戦慄はホラーに近い。サルトルの小説『一指導者の幼年時代』(1938年)から着想を借りているが、独裁者への道のロジックは異なる。ナチズム台頭の起点となったヴェルサイユ条約を背景に、フランスにやってきた支配階級の両親(米高官の父とドイツ人の母)から暗い抑圧を受けて育った美少年が、のちに陰謀的な新興勢力のリーダーとなる……。まるで超常現象のない『オーメン』ではないか!
その不穏さを大仰なまでに煽るように、序曲(OVERTURE)から攻撃的に鳴り響く“30世紀の男”スコット・ウォーカーの前衛スコアが最高すぎて悶絶。 映画音楽は実に『ポーラX』以来。もっとやって欲しいよ!
スコット・ウォーカーの音楽がただごとではない
音楽が異様。その音楽を聴く映画。静かな光景を映し出している画面にも、まるで怪物が出現する寸前のような音楽が鳴り響き続ける。物語の舞台はフランスの郊外の冬、かつては優美だったが今は古びた貴族の館、主要登場人物は幼い少年とその両親。なのに、音楽はモンスター映画なのだ。
その音楽を担当したのは、元'60年代の人気ブループ、ウォーカー・ブラザースのスコット・ウォーカー。監督は、10年前に「ファニーゲームU.S.A.」でマイケル・ピットと極悪美少年ペアを演じた俳優でもあるブラディ・コーベット。この監督の新作「Vox Lux」は音楽がテーマ、ルーニー・マーラが歌姫を演じるそうで、そちらも気になる。