ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 (2017):映画短評
ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 (2017)ライター3人の平均評価: 3.3
原作ハッキング(と愛)の出力の問題
無謀にハードルの高い企画の枠内では健闘したとも言えるし、いや見積もりが甘かったのではと率直にこぼしたくもなる……。原作と監督の基本相性は、三池崇史イズムからすると『ジョジョ』は虚構性が高すぎる。スペインロケの発想はまさに三池節なのだが、そこから杜王町の世界像に届かせようとすると、いかにもリアリズムの実景にCGをペイントした画になるんだよな~。
原作へのアプローチは、萎縮したのかえらく真面目。『ジョジョ』文化圏に深い理解があれば、もっと二次創作的な方向にも舵を切れたのでは? 例えば福田雄一の『銀魂』の場合、原作との相性の良さを軸にのびのび遊戯性を発揮していたからね。続編の巻き返しに期待!
劇画に徹して“不良”を描いた三池節の妙
国民的ベストセラーコミックを、三池監督がどこに筆圧を置いて映画化するのか? 興味はそこにあったが、驚きを覚えつつ、なるほどと思わせる。
最大の魅力は不良映画のテイスト。ワルの魅力はもちろん、付随するバンカラや男気の要素も色濃く、とりわけクライマックスの仗助と億泰の熱血セリフの応酬にそれを強く感じた。ある意味、ケンカの武器として“スタンド”を用いた『クローズZERO』とも言える。
舞台の杜王町を再現したロケ地スペイン、シッチェスが意外にハマるのも、そんな劇画町のタッチゆえ。重たげな頭髪スタイルをキメたスタンド使いたちのビジュアルも含め、そこには絵的な興奮が確かに宿っている。
ある程度の予備知識はマストです。
明らかにスペインの風景ながら、杜王町と言い切ってしまうハッタリ感から三池崇史節全開。とはいえ、製作陣の“原作ファンを裏切らない”想いがスクリーンからダダ漏れなところは、『東京喰種』と共通している。キャストに関してもコスプレ大会に終わっておらず、虹村兄弟を演じる岡田将生&新田真剣佑の健闘が目立つなか、虹村父の描写には監督のただならぬ異形愛を感じる。ただ、キャラ設定や見せ場の「スタンド」バトルについてなど、ある程度の予備知識がないと厳しい部分もあり、決していちげんさん大歓迎な仕上がりではない。今回、影を潜めていた由花子というか、小松菜奈の狂気が観たいので、『第二章』は是非ともお願いしたい!