疾風スプリンター (2015):映画短評
疾風スプリンター (2015)ライター3人の平均評価: 4
スポ根映画の熱をフィジカルなレベルで伝える快作
香港製男気映画というとジョン・ウーやジョニー・トーが思い浮かぶ。彼ら先人とダンテ・ラムが異なるのは、リアルな肉体性の追求という点。
展開こそよくあるスポ根ものだが、ペダルをこぐ脚や太ももの筋肉の収縮、苦しげな表情、息遣いはひたすら生々しい。転倒時に生じた怪我や傷も、しっかり見せるから痛みもダイレクトに伝わってくる。そういう意味では、前作『激戦 ハート・オブ・ファイト』の発展系でもある。
ラム作品の常連ニック・チョンが出演していない前情報に寂しさを覚えていたものの、見始めるとそれがどうでもよくなった。男優たちはもちろんヒロインも添え物に終わらず、存分に肉体性を表現。アツい!
スポ根ドラマの王道を行く自転車ロードレース・ムービー
天真爛漫な天才型と真面目一直線な努力型。最大の親友にして最大のライバルでもある2人のプロサイクリストの、友情と成長を描いた自転車ロードレース・ムービーだ。
一人の女性を巡る三角関係、栄光からの転落、挫折からの再起と、まさにスポ根ものの王道を行くようなストーリーは気持ちいいくらいに単純明快だ。ゆえに予定調和な展開が多々見受けられることは否めない。
しかし、そんな弱点を補って余りあるのが、大規模な街頭ロケを含むド迫力のロードレース・シーンの数々だ。役者たちは文字通りの体当たり演技だし、ダイナミックなカメラワークも素晴らしい。エディ・ポンとショーン・ドウの好対照なイケメンも魅力的だ。
臨場感あふれる撮影が物語を盛り上げる
自転車レースを軸にした男の友情ドラマだが、とにかく競技シーンの映像がかっこいい。スピード感にあふれているのは言うまでもなく、格闘技的な要素もたっぷりで、ダンテ・ラム監督の面目躍如。『激戦/ハート・オブ・ファイト』で組んだエディ・ポンのハードな肉体改造を厭わない姿勢を見初めたからの企画のようだが、スタント無しで過酷な撮影に臨んだ役者陣の気迫がスクリーンから伝わってくる。仲間であると同時にライバルでもある青年たちが切磋琢磨し合い、ときには挫折も味わいながら成長する展開はスポ根ものの王道であり、単純な私はやはり胸が熱くなるのであったよ。エディ&劉青雲共演作『奇城』の公開が待たれる!