ジェーン・ドウの解剖 (2016):映画短評
ジェーン・ドウの解剖 (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
今宵、美し過ぎる死体が悪夢の扉を開く
とある遺体安置所に運び込まれた美し過ぎる女性の死体。検視官の親子が解剖を進めるにつれ、次々と不可解な現象が起き始め、やがて死体に隠された恐ろしい秘密と女性の正体が明らかになっていく。
まさにシンプル・イズ・ベスト。遺体安置所の中だけで展開する一夜の物語は極めて単純だが、しかし巧みに計算された細部のディテール描写は丁寧で、そのたどり着く先も少なからず意表を突く。
全体的にはアート系ホラーと呼ぶべきスタイリッシュな作品だが、同時にルチオ・フルチの『ビヨンド』を彷彿とさせる禍々しい雰囲気があるところもいい。かなりリアルな解剖シーンが満載なので、グロいのが苦手な方は要注意かも。
「トロール・ハンター」監督のユニークな発想は今回も健在
監督は「トロール・ハンター」のアンドレ・ウーヴレダル。ノルウェーの民話上の存在トロールが実際に生息するという設定で、その捕縛計画をネイチャー・ドキュメンタリーの手法で描いた前作は、民話とドキュメンタリーという異質な2者の掛け合わせの斬新さで魅了してくれた。この新作では、異質なもの同士が予期せぬ衝突をする。身元不明女性の死体が司法解剖されていく過程で、司法解剖の理念とはまったく異質のものが明らかになっていくのだ。そこに、解剖を担当する父親を息子の心理ドラマをプラス。事態の進行と並行して少しずつ明かされていく父と子の心情を、ベテラン俳優ブライアン・コックスとエミール・ハーシュが演じている。