少女ファニーと運命の旅 (2016):映画短評
少女ファニーと運命の旅 (2016)ライター2人の平均評価: 4.5
過酷な運命をはねのけた子供たちの姿に涙
ユダヤ人を次々と逮捕(→収容所送り)したヴィシー政権下でスイスを目指した子供たちの運命にハラハラさせられっぱなし。集団を率いることになった少女ファニーの心労は計り知れず、重責に耐える彼女の芯の強さと優しさが心にしみる。実話インスパイアだし緊張感あふれる旅なのだが、子供の視点で事態を見つめる展開になっているので、冒険譚めいた雰囲気もある。子役は皆、本当に愛らしい。また自身の出自や戦争中と理解していなさそうな年端のいかない幼子たちが折々に見せる無邪気さに救われる。そして逮捕の危険を冒してまでユダヤ人を救おうとした人がいたことにも! 世界情勢がどんどんきな臭くなる今だから多くの人に見て欲しい作品だ。
「子供の目を通した戦争」の風景を明快に
監督のローラ・ドワイヨン(C・クラピッシュ監督の妻ですな)がこの企画を受け取った時、ナチス占領下のパリから南仏へ逃げるユダヤ人兄弟の少年を描いた父ジャック・ドワイヨンの『小さな赤いビー玉』が頭をよぎった事は間違いない。その意志を受け継ぎつつ父親とは「違うもの」を作ろうと、フリーハンドではなく綿密に作り込まれたサスペンスの方に向かったのかも。
子供たちの乱反射するエネルギーさえも、ウェルメイドな統率に組み込んだのは評価や好みの分かれ目になるだろうが、そのぶん「逃亡」が「冒険」になる無邪気な陽性のトーンがくっきり判り易く出た。隠れた傑作『僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ』等も連想。