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レッド・スパロー (2018):映画短評

レッド・スパロー (2018)

2018年3月30日公開 140分

レッド・スパロー
(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

なかざわひでゆき

リアリズム重視のハードで骨太な女性スパイ映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 バレエ生命を絶たれた元プリマドンナが、生き残るために母国ロシアの女性スパイ、スパローとなる。その武器はずばりセックス。いわゆるハニートラップだ。モデルとなったのはソ連時代に実在した国家諜報機関。ソ連育ちの筆者もその存在は聞いたことがあるし、実際にある女性がそうらしいという噂も耳にしたことがある(本人が忽然と姿を消した後にだが)。
 元CIA捜査官が原作を書いているだけに、かなりリアルかつハードで骨太な仕上がり。ヒロインは自由を求めて露米両国の目を欺いていくわけだが、随所にちりばめられた伏線が鮮やかに結実していく終盤の展開は見事だ。ヌードも辞さないジェニファー・ローレンスの大熱演も見どころ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

美貌のスパイって現実にはありえないと実感しました

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ハニートラップを仕掛ける美貌の女スパイ役にジェニファー・ローレンスはミスキャストなのではと思っていたが、彼女の地味顔が生きた。ボリショイのプリマになる夢をライバルに阻まれたことで国際スパイ戦に放り込まれる女性ドミニカの決死のサバイバル劇に似合うのはやはり、ジェニファーのようにタフな雰囲気を持つ女優だ。生き残るためにサディスティックな訓練や拷問や耐える精神力と体力、陥れた敵にきっちり落とし前をつける度胸の持ち主を華奢な美女が演じると嘘くさくなったはず。目を背けたくなるほど残酷な場面もあるが、生まれ持った才覚で運命を切り開くドミニカの綱渡り人生はスリリングで目が離せなくなるはず。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

オスカー女優の熱演が体現するスパイ・ハラスメント

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 諜報サスペンスらしいスリルは確かに宿っているものの、むしろ女スパイ残酷物語に寄っているのは「#metoo」のご時世を反映してか。ともかく、実話に基づいていることを思うと、この物語は重みがある。

 とりわけヘビーなのはスパイ養成学校のシーンで、生徒たちの前でハニートラップの実践、すなわち性行為を強いられるところ。『愛の嵐』を生き抜いたC・ランプリングふんする教官の静かなスゴみも手伝い、ヒロインの精神的圧迫に緊張を覚えずにいられない。

 オールヌードもいとわず“スパ・ハラ”を体現したJ・ローレンスは熱演と言ってよく、前作『マザー!』に続いて、女優根性を見せつけた。彼女あっての映画。

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平沢 薫

誰が誰を騙すのか。スパイ物ならではの面白さ

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 誰が誰を騙そうとしているのか。そのためにどんな手を使うのか。そうしたスパイ・サスペンスならではの面白さが正面から描かれる。ロシアの女性スパイと、彼女に惹かれるアメリカの男性スパイは、本当に協力し合うことにしたのか、それともそれは策略なのか。もしもセリフにしたらあからさまになりすぎる、互いの微妙な心理的駆け引きを、ジェニファー・ローレンスとジョエル・エドガートンが表情と動きで表現しようとする。
 ローレンスは、今回も若く強く賢い女性を演じてよく似合い、27歳とは思えない貫禄。ふと微笑むとエクボが愛らしく、ガラリと雰囲気が変わるので、彼女がそういう側面を発揮する役柄も見てみたくなる。

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くれい響

『ハンガー・ゲーム』監督&主演女優の新たな共謀

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『悪女/AKUJO』後だけに、インパクトに欠けるかもしれないが、こちらはあくまでもハニートラップ専門で、トドメの一撃は別人が担当というリアリティ重視。『アトミック・ブロンド』がままごとに見えてしまうほど、全編に渡って不穏な空気が流れるなか、鬼教官(シャーロット・ランプリング!)率いるスパイ養成機関のシーンにおける緊迫感は別格。スポーツクラブには不向きな水着&脱ぎっぷりもいいうえ、拷問シーンも辞さないジェニファー・ローレンスの堂々たる芝居は圧巻の一言だが、これは彼女とフランシス・ローレンス監督との信頼関係あってのもの。そう考えると、『ハンガー・ゲーム』の意味は十分にあったといえるだろう。

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猿渡 由紀

意図せずしてタイムリーになった"セクシーな"スリラー

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

「#MeToo」の時代、体を武器にすることを強いられるこの女性の話は、タイムリーといえばそう。だが、 "セクシーなスリラー"が意図したところなのだとしたら、皮肉な結果。美しいジェニファー・ローレンスがせっかく脱いだのに、なんとなくネガティブな気持ちになってしまうのだ。その意味では、あと数年早く公開されていたらよかったのかも。ストーリー的には、いろんな仕掛けが用意されていて、最後に「なるほど」と思わせてくれる。バレリーナの世界や、ロシア、東欧、ロンドンといった設定も、ビジュアルに刺激をもたらす。ただし後半の拷問シーンは過激。その間ほとんど下を向いていたが、叫び声だけでもたまらなかった。

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斉藤 博昭

「体当たり演技」とは、こういうものだ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

一流バレリーナの主人公が本番中のアクシデントによって、スパイへの道を余儀なくされるのだが、ステージ上でのケガのシーンから、目を疑う衝撃度(パドドゥの相手がセルゲイ・ポルーニンというのも見どころ)! 今作のそんな過激さは全編に貫かれ、相手はもちろん自分の欲望までもコントロールする異様なスパイ訓練、全身全霊で挑むハニートラップなど、予想のふた回りくらい上をいく描写に素直に驚く。
ジェニファー・ローレンスは、肉体表現として女スパイを体現するだけでなく、たびたび訪れる過酷な試練を「乗り越えた後」の達観した表情で静かに圧倒する。これぞ、演技巧者の技ではないか。

この短評にはネタバレを含んでいます
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