レザーフェイス-悪魔のいけにえ (2017):映画短評
レザーフェイス-悪魔のいけにえ (2017)ライター4人の平均評価: 3.5
『サイコ』シリーズにおける『サイコ4』のような立ち位置
『悪魔のいけにえ』シリーズの名物チェーンソー男、レザーフェイスの誕生秘話を描いた前日譚。なにしろ製作元が前作『飛び出す 悪魔のいけにえ』でやらかしてくれた連中なので、見る前は悪い予感しかしなかったのだが、蓋を開けてみれば意外と悪くない。まあ、期待値が低かったせいもあるだろうけど(笑)。
ソーヤー家の末っ子がいかにして怪物レザーフェイスへと変貌したのか。ストーリー自体は無理なこじつけ感が否めないものの、オリジナルへの真面目なリスペクトが感じられるところは好感が持てる。『サイコ』シリーズにおける『サイコ4』のような立ち位置か。後味の悪さも個人的には好みだ。
ヤツのチェーンソー・デビューまで目が離せない!
続編やリメイク、3D版が続き、“まだ、やんの!?”と思うファンもいるかもだが、これは新鮮。殺人鬼の少年期に焦点を当てただけではなく、物語そのものを面白くしようとする作り手の気概を確かに感じる。
少年院を前半の舞台に設定したのが、まず面白い。そこでは誰もが匿名で暮らしており、誰がレザーフェイス本人なのかわからないミステリー。そして中盤の暴動、後半の逃避行は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のよう。展開そのものがワイルドなのだ。
スプラッター指数もこれまで同様高めだし、舞台となるテキサスの荒涼感もよく出ている。S・ドーフ×L・テイラーのクセ者役者対決も濃厚で、最後の最後まで目が離せない!
少年たちの誰がレザーフェイスになるのか
「悪魔のいけにえ」の、人間の皮膚で作った仮面を被り、チェーンソーを振り回すレザーフェイス。この伝説的存在についてはこれまで幾つもの人物像が描かれてきたが、また新たな人物像が加わった。
今回はストーリーに"謎解き"をプラス。後のレザーフェイスは、5歳で更生施設に収容された時に名前を変えられるので、その10年後に少年たちが施設を脱走するが、その中の誰がレザーフェイスになるのかは分からない。観客は彼らの行動を見ながら、誰が彼なのかを推理していくことになる。また、どの場面を"レザーフェイス誕生の瞬間"と捉えるのかも、各自の解釈に任されている。そんな仕掛けが楽しめるシリーズ最新作だ。
シリーズはつまりオマージュなり/トビー・フーパーR.I.P.
これ、上出来のような気がするんですけど、ホラーマニアの皆様いかがでしょう?(笑)。エピソードZEROっていうから、妙な謎解きになったらイヤだなと思っていたが、必要以上には神話にタッチせず、単体で振り切れた応用編に仕上がっている。特にオリジナルの前年作である後期ニューシネマの傑作『地獄の逃避行』を参照したという辺り、「前日談」のイメージとして最適解ではなかろうか?
「私、前からここで働きたかったんです」と凶悪施設に自らやってくるドM天使=天然キャラの美女リジー(これがデビューのヴァネッサ・グラッセ)は強烈な扱い。監督は『屋敷女』のコンビで、フレンチ・ホラーのエゲツなさが脈打ってるのがポイント。