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孤狼の血 (2018):映画短評

孤狼の血 (2018)

2018年5月12日公開 126分

孤狼の血
(C) 2018「孤狼の血」製作委員会

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.6

森 直人

僕は東映実録版『ラ・ラ・ランド』だと考えています

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

筆者の中ではこれ『ラ・ラ・ランド』と「意味」は同じなのである。チャゼルも白石和彌も、20世紀の映画遺産(ミュージカル/東映実録路線)のジャンルや形式総体を「これ一本」でアップデートしている事。また、かつて撮影所システムから生まれた映画の形を、実質インディに近い状態で作る困難を引き受けている事において。

簡単に言うと「新古典派」だが、既成の枠組みをあっけらかんと拝借する姿勢をどう扱うか――この点が一番重要な評価の分かれ道だと考えている。ただし開き直りとも取れる舵の切り方は、映画の本来性が終わっちゃう、との切迫感に基づくもので、誰かがやらねばいけない。故に最大限のリスペクトと星数を捧げます!

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

スーパーで豚肉買うときに迷うようになりました

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

東映の男気を感じる快作! 過激な丸暴の刑事、大上と大学卒のキャリア組、日岡刑事がヤクザ相手に頑張る、なんて単純な話ではなく警察上層部の思惑や暴力団の激しい抗争が絡み、人間関係も展開も「えっ?」となる複雑さ。見終わった後、柚月裕子の原作と知って仰天の、実に男臭くて血なまぐさい物語だ。正義のためなら常軌を逸した捜査も当然という大上の暴れっぷりはもちろん、ヤクザたちの抗争などときに目を覆うシーンも多いが、大いなるカタルシスが期待できる白石和哉彌監督の演出にぐっとくる。役者は全員素晴らしく、特に若頭役の江口洋介にうっとり。ちなみに今、スーパーで豚肉買うときに迷うようになりました。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

去勢された生ぬるい現状に挑む「東映やりすぎ路線(仮)」

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 生ぬるい現状を変える怪作だ。暴力団に拮抗する掟破りな警察。呉ロケで醸し出す昭和の猥雑さ。傍若無人なデカ役所広司、狂気を継承する松坂桃李、大化けしたヤクザ竹野内豊。女優陣は艶やかだがエロスに課題は残る。去勢された日本映画を風刺するような“真珠攻撃”の奇襲は痛快だ。荒ぶる東映復活がコンセプトだが、韓国ノワールを吸収して低温の『アウトレイジ』をも恫喝し、無菌室な時代へのアンチテーゼを踏まえて暴力表現や自主規制用語を打破する。表現の自由を懸け、東映はシリーズ化すべき。かつて「実録」や「不良性感度」という造語でブームを醸成したが、今作に始まる路線を何と名付けるのか、惹句センスも問われる。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

男も女も惚れる『アウトレイジ』への回答

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『シャブ極道』に『渇き。』と、役所広司がブッ飛んだキャラを演る作品にハズレなし! その役所に対し、勢い止まらぬ松坂桃李が牙を剥く。前作『サニー/32』と比べりゃ、白石和彌監督にしては大人しい気もしないでもないが、正真正銘△マークの看板を背負って、ここまでやったことに拍手を送りたい。また、ピエール瀧被りはあるものの、完全な『アウトレイジ』への回答となっており、白石監督らしい女性映画としても見ることもできる。“脱ぎ”に関して甘いので★マイナスだが、軟弱化進む昨今の日本映画界で、『カラーズ 天使の消えた街』『NYPD15分署』『トレーニング デイ』系譜といえる硬派な警察映画が撮った功績はデカい!

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

東映の血は、新たなエキスを注入して受け継がれる

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

懐かしの東映のロゴから、一気に『仁義なき戦い』の空気へと回帰し、冒頭の養豚場でのリンチの壮絶を極める演出で早くもギアはトップに入る。白石和彌監督は『日本で一番悪い奴ら』でも、沸点を超える男たちの生きざまを見せ切ったように、やはり東映の水が合う。観終わった瞬間、壮絶さはカタルシスに昇華していた。

一見、ミスキャストのように浮いている松坂桃李だが、その浮いている感じがストーリーと合致していく過程に身震いする。作品における彼の立ち位置と、役者としての個性が、『仁義なき』の世界より、『インファナル・アフェア』のムードに近づけた感も。むしろ他に明らかにミスキャストがいるが、作品にはカスリ傷程度かと。

この短評にはネタバレを含んでいます
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