SUNNY 強い気持ち・強い愛 (2018):映画短評
SUNNY 強い気持ち・強い愛 (2018)ライター4人の平均評価: 4
コギャルと小室ブームと友情と初恋にズキュン
90年代カルチャーでもあるコギャルを主人公にすることで日本らしい青春映画になっていて、リメイク成功! 大人世代を演じた篠原涼子はじめとする実力派女優の“酸いも甘いも噛み分けた”感もいいが、引き込まれたのはコギャルを演じた若手女優のあふれんばかりのエネルギー。笑顔の裏にある高校生特有の悩みや葛藤から、イケイケのおバカ扱いだった(当時)彼女たちの人間性が伝わってくる。『ラ・ラ・ランド』風な冒頭で使われる久保田利伸やアムロちゃんのヒットソング、ルーズソックス、雑誌「egg」と「懐かしい〜」の連続。台詞の端々にも時代を感じさせる単語があるし、小道具やファッションも同様で、製作陣の凝り方が半端ない!
総合的に『あやしい彼女』には及ばず
「未だに、フラッシュモブ<<『(500日)のサマー』にこだわるか?」と思わせる冒頭に不安を覚えるものの、さすがは『あやしい彼女』に続く、韓国CJエンタによる「ワンソース・マルチテリトリー戦略」の一本。千早に続き、白目芝居も炸裂な広瀬すずらのキャスティングも含め、かなり手堅く、大根仁監督作というより、川村元気プロデュース作感が強い。とはいえ、この流れ、座組みからして、あの役は福山雅治がキャスティングされるべきだったし、ラストの遺言の件は、日本人目線で、もうちょい脚色すべきだったのでは? そういうところで、現実とファンタジーのバランスが曖昧になってしまった感がある。
安室でもTRFでもなくオザケンの曲がタイトルになったことで
心配されたキャストの変更もまったく気にならず、大人時代と高校時代、それぞれのキャストが意識的に近づこうとした努力が見事に成功した。時代が移るシーンに「まばゆい光」を使う演出も効果的で、高校生たちが通学中に踊りだすミュージカル場面なども、楽しさだけでなく、切ないノスタルジーさえ喚起させる。
タイトルの小沢健二の曲は、劇中で使われる意味も明確なのだが、90年代を回顧させる今作にあって、この「強い気持ち・強い愛」は筒美京平メロディということで、70〜80年代歌謡曲テイストも備える。日本人のDNAレベルの聴き心地を伴って、90年代に青春を過ごさなかった人も心躍らせる。その意味で完璧すぎるチョイス。
新たな国民映画――「Jポップ・グラフィティ」になるかも
大根仁×川村元気の最大膨張率をマークしたか? ディテール充実のスーパー大衆映画。韓国版がアメリカナイズされた「863世代の妹たち」を描くのに対し、日本社会の転換期としてよく語られる「95年(辺り)」の記憶をフィクション再構築。大根・川村の世代差やクラスタの違いが功を奏し、単一の認識による世界像ではなく多層的で入口の多い映画空間になった。
選曲はある種再発見。久保田利伸「LA・LA~」の完成度など改めて聴くとびびる。フィナーレ号泣は必至。CICSOのレコ袋に初期エイプのイケメン大学生をめぐり甘酸っぱく響く「SWEET 19 BLUES」は『アメリカン・グラフィティ』ばりの恋しさとせつなさ強度!