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ジュラシック・ワールド/炎の王国 (2018):映画短評

ジュラシック・ワールド/炎の王国 (2018)

2018年7月13日公開 128分

ジュラシック・ワールド/炎の王国
(C) Universal Pictures

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

相馬 学

単なる恐竜パニック映画からの劇的な脱皮

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 正直、このような展開になるとは想像していなかった。これは嬉しい驚き、だ。

 恐竜パニックを純粋なエンタテインメントに仕立てることが、これまでのシリーズのトーンだったが、今回は違う。“人間がつくってしまった「命」と、人はどう対峙するか?”という、フランケンシュタインにも似たテーマが脈づく。恐竜パニックは相変わらずスリリングだが、テーマの重さがググッとのしかかり、歯応えは格別だ。

 そういう意味では、毎回、硬派なメッセージを込めてきたリブート版『猿の惑星』シリーズに近い。見る前と見た後では、“ジュラシック・ワールド”という言葉の意味が、違ってくるはず。続きが待ち遠しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

生命を宿す以上、恐竜を見殺しには出来ないというテーマの大転換

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 様々な要素が“衝突”した作劇に違和も覚えるが、ハイブリッドな構造は野心的だ。孤島の恐竜暴走パニックから、大邸宅でのゴシックサスペンスへ。純然たるエンタメに乗せ、現代へ警鐘を鳴らすメッセージ性。人間に懐いた恐竜と、遺伝子組換えによる凶暴恐竜の混在。CGのみならず、アニマトロニクスで強調する実存。文明を脅かす恐怖の対象が大自然の猛威で絶滅の危機に瀕し、テーマはコペルニクス的転回を見せる。たとえ人工的に創造された生き物であっても、生命を宿す存在である以上、人間はどう向き合うべきか。自らの作家性に引き寄せるバヨナ監督が、子供の視座に託す終盤の展開は息を呑む。次回完結編への興味は、俄然高まった。

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なかざわひでゆき

三部作完結篇への期待をつなぐには十分な出来栄え

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 廃墟となったジュラシック・ワールドの島から、生き残った恐竜たちを生け捕りにして商業利用するという筋立ては、基本的に『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の焼き直し。既視感を覚えるシーンも少なくない。まあ、それは作り手も自覚しているはずなので、とりあえずストーリー展開の速さと出し惜しみしないサービス精神で見せていく。
 孤独な少女を巡る『怪物はささやく』的な人間ドラマはJ・A・バヨナ監督らしい。常連組の名女優ジェラルディン・チャップリンの起用も含め、同監督の個性はしっかりと出ている。ラストのオチから連想されるとんでもない事態を、次作でどう収取するのか。完結篇への期待を繋ぐには十分な出来だ。

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平沢 薫

恐竜たちがみな愛おしい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 前半はこれまでのシリーズ直系の大自然でのアクション・アドヴェンチャー、後半は大邸宅でのホラー・サスペンス、そこに「怪物はささやく」のJ・A・パヨナ監督らしい、子供の目から見た悪夢の味をプラス。さらにテーマは第1作の基本に立ち返り、人間は自分たちの手に負えない領域に触れてしまったのではないかという疑問を提示。最後にはとんでもない光景を出現させる。そんなあれもこれもを詰め込んだ大盤振る舞い大会。
 その中で際立つのは、恐竜たち。煙の中で首を伸ばす巨大な草食恐竜の切なさ。頑丈な額で頭突きする小型恐竜のキュートさ。前作のヴェロキラプトル、ブルーの凛々しさ。人間たちは醜く、恐竜たちはみな愛おしい。

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猿渡 由紀

資本主義とテクノロジー、倫理のバランスを問う

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 怖さと迫力は今回もたっぷり。映画の前半は噴火した火山が舞台になっていて、それもまた緊迫感を究極に高めている。生きるか死ぬかの状況が次々に起こるローラーコースターのような展開の中では、さらに、進化するテクノロジーの使い方、金儲けと責任のバランスといった、考えさせる事柄にも触れられていく。今作の監督に抜擢されたJ・A・バヨナは、前作の流れを受け継ぎつつ、「怪物がささやく」を思わせる彼ならではのニュアンスも、さりげなく、しかししっかりと加えてみせた。この続きがどうなるのか、今から3作目の公開が待ちきれない。

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くれい響

あくまでも3部作の2作目という立ち位置

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

J・A・バヨナ監督作ということもあり、これまでのシリーズ以上に子役がキーパーソンになってるだけでなく、後半の舞台となるロックウッド邸の雰囲気が、妙にゴシックホラー入っているだけで高まる。しかも、デ・パルマや『エイリアン』などのオマージュ攻撃に、何かというと背中で語るブライス・ダラス・ハワードの変貌も興味深い。とはいえ、話がサクサク進む割には、今回の肝になるはずだったオーウェンと相棒・ブルーのタッグ感はイマイチ。『ランペイジ』のロック様と白ゴリのような展開を期待してただけに、傭兵部隊との絡みも含め、肩透かし感が強い。とはいえ、改めてタイトルの意味合いが強くなるラストへの流れは流石の一言だ。

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斉藤 博昭

アトラクションムービーなのは間違いない

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

恐竜たちが主役とあって「ありえない」描写は常識。それにしても前作以上にツッコミどころが多くなった印象は拭えない。火山大噴火の危機が迫る前半は、そのツッコミどころも楽しいレベルだ。前作との大きな違いは、密室空間アクションの多さで、そこにスリルを感じるかどうかで評価が分かれそうだ。敵&味方の関係性がわりとユルめで、家族およびロマンスを含めた人間ドラマが補足的なのは、新種恐竜の凶暴性を際立たせるためと解釈したい。シリーズが追求する「恐竜の進化」という目的は十二分に達成されているのだから。さらに3作目が予定されているが、今作のラストからどう収拾をつけるのか。作り手の腕の見せどころになるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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