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インクレディブル・ファミリー (2018):映画短評

インクレディブル・ファミリー (2018)

2018年8月1日公開 118分

インクレディブル・ファミリー
(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

ライター9人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

清水 節

ブラッド・バードのリアリティの原点は『科学少年J.Q』

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 スーパーヒーローとスパイムービーとホームドラマを融合させた発明。60年代をスタイリッシュなものとして捉え直した美術感覚。14年前の前作直後から物語を始めても、もはや普遍的ゆえ違和感がない。男の威厳にこだわっていた父もすっかり育児の人となり、ヒーロー復権の白羽の矢が立つのは母というタイムリー性。惜しむらくはヴィランの存在感の薄さだが、敵役をメディアを介して洗脳されやすい大衆と考えれば、なんとも刺激的。ハリウッド製アニメでありながら、大人の視線を視野に入れたブラッド・バードは妥協を知らない。劇中TVとして登場するハンナ・バーべラのSFアニメ『科学少年J.Q』のリアリティは、本作の精神的ルーツだ。

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くれい響

偶然すぎる『未来のミライ』感

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

「ウォッチメン」(原作)の影響もあった“ヒーローもつらいよ”な前作だが、それから14年間に『映画版』も『ダークナイト』も『アベンジャーズ』も公開。ヒーロー映画の幅も広がっただけに、前作から4ヶ月後の設定ながら、かなり社会的メッセージが強い意欲作になった。それに加え、劇中TV放送される「アウターリミッツ」「J.Q. ジョニー・クエスト」な60年代SFテイストも濃厚に。前作よりも増し増しな「クレしん」展開だけでなく、育児あるあるや引っ越し先の内装デザインなど、偶然すぎる『未来のミライ』との共通点も興味深い。さらに、前座に流れる“激辛!点心ムービー”『Bao』のインパクトもスゴすぎる!

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なかざわひでゆき

やっぱりただのファミリー・アニメには終わらない!

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 家族愛を中心としつつヒーローや正義の在り方を問うた『Mr.インクレディブル』の続編。今回もまた体裁は家族向けのファミリー・アニメだが、その一方で外へ出て活躍するママの代わりに子育てで悪戦苦闘するパパの姿に第四波フェミニズムの時代を投影し、さらには一般大衆による他力本願なヒーロー願望に鋭い風刺で斬り込む。
 もちろん、そうした社会的メッセージを読み解かずとも素直に楽しめること請け合い。赤ん坊の末っ子ジャック・ジャックが悶絶級にキュートで、彼の繰り出す奇想天外なスーパーパワーに捧腹絶倒させられる。字幕版はボブ・オデンカークやイザベラ・ロッセリーニなど新規参加の声優陣も豪華。

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相馬 学

ただのファミリー・アニメには終わらない毒が妙味

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 親も子どもも家族そろって特殊能力を持つスーパーヒーロー。『Mr.インクレディブル』はそれゆえの家庭内騒動を描き大人も子ども楽しませたが、続編でもスタンスは変わらない。

 ママが仕事で留守の間にパパは育児で悪戦苦闘、子どもは反抗期で、ベビーは手がかかる。そんなドタバタからくる笑いの見せ場に加え、悪との戦いの描写はスペクタクル満載で、アクションのスリルも抜かりない。

 一方で、変化球的に面白いと感じたのがヴィランのキャラクター。スーパーヒーローに頼り切りで、自分では何もしない大衆は何様なんだ!?……というその主張もある意味、正論で、単なるファミリー映画には終わらない毒を味わった。

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中山 治美

過信は禁物!大人にこそ響くテーマ(*一部ネタバレを有)

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

オウム真理教事件がクローズアップされている今、2次元の世界とはいえ生々しく感じるのではないだろうか。
特殊能力を使いたがる子供たちを監督していた大人たちが、私利私欲に駆られた人物に利用される。
その家族のピンチを救うべく立ち上がった子供たちの成長が、今回の見どころだ。
ただテーマのみならず映像も攻めすぎて、大人を惑わすシーンで表現された光の点滅にこちらも眩惑させられそうになったが。
劇場でも鑑賞にあたっての注意喚起がされているが、ファミリー向けの映画として配慮が足りなかったのではないか。
ディズニーらしからぬ落ち度がイタい。

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平沢 薫

スパーヒーロー映画ファンに、キツーイひと言

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 前作同様、スーパーヒーロー映画自身によるスーパーヒーロー映画論。今回は登場人物が、スーパーヒーローが大好きな人々の心理について、鋭い指摘をしてくれる。その一言を聞くだけで、一見の価値がある。
 ストーリーは、前作「Mr.インクレディブル」の直後からスタート。前作はヒーロー活動が禁止された世界で老いた元ヒーローが立ち上がるという、まるで「バットマン:ダークナイト・リターンズ」のような物語だったが、今回はまったく別の物語。思い返せば、前作の公開はサム・ライミ監督版「スパイダーマン」大ヒットの2年後、2004年。それから14年が経った今、私たちを取り巻く状況の変化の大きさも再認識させてくれる。

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斉藤 博昭

実写ヒーローもの以上に、アクション映画の真髄がみなぎる

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

いくらCGを多用しているとはいえ、やはりアクション映画は「実写」が見応えがある。そんな固定観念も、この作品が軽々と蹴散らしてくれるだろう。冒頭の怒涛スペクタクルから、そのカット割り、アングル、編集のテンポ、キャラの表情まで、アニメという一見、何でも表現可能なスタイルながら「実写でこう見せたら、最高の映像になる」という意識がアリアリなのだ。
脇キャラに至るまで、リアルな人間の雰囲気に、アニメらしい「かわいさ」エッセンスを少々まぶす、その配分も1作目を超える完璧さ。
当然のごとく家族愛が重要テーマだが、そこを妙に強調しないところも好印象で、近年のピクサーでも非の打ちどころのない傑作となった。

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森 直人

ブラッド・バードの申し分ない仕事(+アルファ)

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『サンダーバード』のジェットモグラのようなマシン(1960’s調!)が街を破壊する。そこに登場するあの一家。だがヒーロー活動はやはり非合法で……。続編、という以上に前作から14年を経たアップデートの感が強い傑作。04年の第一作には9.11以降の正義(ヒーロー)の揺らぎがキリキリした緊張感を与えていたが、今回もその主題を延長させつつ、多角的な視座で全体性を回復させようとする意思が目立つ。

ママが外で頑張り、パパが主夫。この家族の肖像がどこか大らかな味わいなのは、新しい位相の肯定性に向かっているからだと思う。ちなみに前座の中華短篇『バオ』も素敵な家族映画。餡を包む皮のモチモチした食感、いや触感!

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猿渡 由紀

誰もが共感できる家族の語。同時上映の短編も最高

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

1作目が公開されたのは、「アイアンマン」の4年前。引退させられたスーパーヒーローという設定は、それ自体が新鮮だった。今は飽きるほどスーパーヒーロー映画がある時代。そんな中に飛び込んできたわけだが、嬉しいことに、この14年ぶりの続編は、ほかと全然違う大傑作だった。テクノロジーの進化のおかげでアクションはもっと楽しく、ミッドセンチュリーモダンを意識したビジュアルデザインもかっこいい。だが、今作の最高の強みは、イクメンになろうとがんばるパパ、家庭を心配しながら仕事するママ、男の子のことで心を悩ませる娘など、誰もが共感できる家族の話の部分だ。同時上映の短編も最高で、合わせての5つ星。

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