ロンドン、人生はじめます (2017):映画短評
ロンドン、人生はじめます (2017)ライター2人の平均評価: 3
英国ハムステッド散策気分が味わえる
映画の主役は原題の"ハムステッド"。ロンドンの北方、カムデン・ロンドン特別区にあり、この街最大の公園ハムステッド・ヒースと高級住宅街で知られるこの土地のさまざまな風景が描かれる。それを映し出す視点は、ダイアン・キートン演じるアメリカから来てここに住む主人公。これは、部外者から見た英国的な英国なのだ。公園の緑の柔らかさ、人間がこっそり暮らせるほどの広大さ。古風で瀟洒なお店が並ぶ静かな通り。そんな絵に描いたような英国の風景がウットリもの。そして、高級住宅に住む女性たちの微妙にイヤな感じも英国流。「ファントム・スレッド」のレスリー・マンヴィルが、上品なままコワい英国女性の真髄を味あわせてくれる。
大人の恋ならではの、ほろ苦さ
ロンドンの裕福なコミュニティで暮らすも、なんとなく自分は属さないと感じている未亡人のエミリー。そんな彼女が知り合ったのは、彼女らの世界からはほど遠い、自由以外ほとんど何も持たない男。どこから見てもミスマッチなのだが、彼女が彼に惹かれていくことに不自然さは感じない。そして、その恋が招く展開や結末も、いかにもこの年齢の人たちのことと納得がいく。主演のダイアン・キートンが、本人のテイストそのままのファッションで出てくるのも素敵。彼女のご近所さんを「ファントム・スレッド」でオスカー候補入りしたレスリー・マンヴィル、恋のお相手をブレンダン・グリーソンが演じており、演技のクオリティは100%満足できる。