アリータ:バトル・エンジェル (2018):映画短評
アリータ:バトル・エンジェル (2018)ライター6人の平均評価: 3.7
続きが観たい!すごく観たい!けど……。
やっと出来上がった木城ゆきと「銃夢」の映画化(結局製作に回ったJ・キャメロンに原作を教えたのはG・デル・トロらしい)。漫画のまま果たして可能なのかと心配してた人体毀損描写も、自制リミットを簡単に外してしまえるR.ロドリゲスだから難なくクリア。いかにも日本アニメぽい主人公の目の大きさも“サイボーグではあるがほぼ人造”であるという意味で映画内では有効で、ヒューゴとの“異人間”間恋愛もかなり倒錯したエロティシズムを引き起こす。その頂点が“モーターボール”に集まる競技者の面々。インモラルと受け取る者も少なくないだろう過激な身体改造を含むサイボーグ・フェティシズムを前面に押し出した最初の映画ではないか?
良い意味で中二的感性が炸裂!
J・キャメロンもR・ロドリゲスも中二的な部分があるフィルムメーカーなので、原作の過激な部分を抑えたPG-12仕様は仕方のないところ。
ドラマも低年齢層に配慮してかわかりやすいものとなっており浅さは否めないが、それでもこのタッグならではの絵的な興奮は存分に味わえる。バトル・エンジェルの名に恥じない、スピードとチャージを兼ね備えたアクションこそが本作の肝。
ビジュアルの妙味はディテールにも活きている。武術、ローラーバトル、ガジェット、街なみ、そしてサイボーグ。デザインも、きっと楽しんで作ったのだろう。良い意味で中二的な感性が炸裂し、見ているこちらも大いに楽しんだ。
CGキャラの豊かな感情表現がカギ
ジェームズ・キャメロンの20年越しの企画をロバート・ロドリゲスが実現させた『銃夢』の実写映画化。やたらと目の大きなバトル・エンジェル、アリータの造形に、最初のうちは少なからず違和感を覚えるのだが、そんじょそこらのCGキャラとは比べ物にならない豊かな感情表現のおかげもあって、いつしか愛しさすら覚えるようになる。もはやディストピアなサイバーパンク系アクション映画は出尽くした感のある昨今、もうちょい早く映画化されていれば…という悔いは否めないし、あからさまに続編を予感させる終わり方にも疑問は残るものの、それでもなお最強兵器たるアリータの痛快な戦いっぷりにはテンションが上がる。
あと15年早く実現してれば!!
確かに原作愛を感じる脚色ではあるし、近年の3D映画の中でも遊び心たっぷりの特殊効果も用意されているが、『カイト/KITE』まで実写映画化されたご時世に、『ゴースト・イン・ザ・シェル』と同様、「せめて、あと15年早く実現してれば!!」という仕上がりだ。ピグマリオンコンプレックスのおっさん萌えという設定自体、かなり擦られすぎているうえ、異形サイボーグのヴィジュアル&バトルも既視感がありすぎる。ただ、当初は問題視されていた“デカ目”はそこまで気にならないし、ジョン・マクティアナン版『ローラーボール』の酷さを思い起こしてしまうほど、“モーターボール”の試合シーンは、見応えアリ!
キャメロン→ロドリゲスへの移行も納得のエンタメ的楽しさ
冒頭、間髪を入れず物語が動き出し、その後もテンポは快調。全体の流れは完全にエンタメなムードが意識され、アリータの自己発見・再生やラブストーリー、他のキャラクターとの駆け引きなど、すべてがスムーズで見やすい。ジェームズ・キャメロンは「自分が監督したら、もっとダークでシリアスになった」と語ったが、そちらのバージョンも観てみたかった。
ここ数年、3Dを売りにする作品が減少傾向にあるなか、今作の空間設計やアクション場面は久々に3Dの醍醐味を満喫させる。このあたりも『スパイキッズ』で早い時期に本格3Dでケレン味を発揮したロドリゲスらしい。モーターボールのシーンの臨場感とスピードだけでも体験の価値大。
アリータのユニークな存在感を堪能したい
人間とメカが融合した異形のサイボーグたちが、スクリーンの巨大さと3D映像の奥行きを最大限に使って、縦横無尽に動き回る。特に、高速で疾走しつつ互いを破壊してボールを奪い合う競技"モーターボール"は圧巻。巨大な身体で襲いかかる敵を、細身の少女体型のアリータがしなやかにすり抜けるのが気持ちいい。メカや街の玩具的な造形、どこかソフトな質感もロドリゲス監督らしい味。
加えて必見なのが、CGで描かれた主人公アリータの独特な存在感だ。人間にとてもよく似ているが、皮膚の質感も表情も、人間とは微妙に違う。目の大きさは、この差異を際立たせるためでもあるだろう。本作はこの少女の一種独特の佇まいを味わってこそ。